CHEMOTHERAPY
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複雑性尿路感染症に対する維持療法の意義と治療後の経過に関する検討 (Cinoxacinを用いた検討)
河田 幸道他
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1984 年 32 巻 9 号 p. 633-646

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抄録

複雑性尿路感染症に対して5日間の初期治療と, それにひを続く10日間の維持療法を行ない, 初期治療効果と維持療法効果との関係から, 複雑性尿略感染症に対する適切な化学療法の期間について検討した。薬剤としてはcinoxacinを用い, 1回400mgを1日2回経口投与し, 臨床効果の判定はUTI薬効評価基準に従って行なった。
対象とした94例に対する初期治療の有効率は50.0%であったが, ひき続き維持療法を行なうことにより有効率は60.6%へと僅かに上昇した。初期治績効果と維持療法効果との間には有意の関係が認められ, 初期治療効果から維持療法効果を予測することが可能と思われた。この場合カテーテル留置症例や混合感染例では, 初期治療効果が無効であれば維持療法により効果が改善する可能性は低く, また悪化例もみられることから維持療法の適応はなく, 早期に他剤に変更するとともに基礎疾患, カテーテルの除去を治療の主体とすべきであると思われた。
これに対しカテーテル非留置の単独感染例では維持療法により効果が改善する例も多く, 特に初期治療により細菌尿が陰性化した症例では初期治療効果をそのまま維持するか, あるいは膿尿が改善する症例が多く, 維持療法の適応になると考えられた。
今回の検討はcinoxaeinを用いた検討であり, また症例も第2, 第3, 第4群の, 複雑性尿路感染症としては比較的軽症例が主体であったこと, さらに休薬期間が坪均7.8日で, 最長でも14日間と短かったことなどから, 今回の成績から複雑性尿路感染症の治癒, 再発などに関して結論的なことはいえず, 今後, 各種の病態に対して各種の薬剤を用い, さらに治療終了後, より長期にわたり経過を観察することにより明確な結論が出されるものと思われる。

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© 社団法人日本化学療法学会
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