CHEMOTHERAPY
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Sultamicillinの実験動物における吸収, 分布, 代謝及び排泄
加納 弘竹居 春実大森 健太郎村上 昌弘下岡 釿雄福島 英明沖 俊一
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1985 年 33 巻 Supplement2 号 p. 128-153

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抄録

Sultamicillin tosilate (SBTPC) の経口投与時の吸収, 分布及び排泄をラット及びイヌを用いて検討し, 下記の結果を得た。
1. SBTPCは経口投与後主として十二指腸より吸収され等モルのampicillin (ABPC) 及びsulbactam (SBT) を血中に遊離し, 末梢血中にはSBTPCの未変化体は存在しなかった。
2. SBTPC100mg/kgを経口投与したラットの血中ABPC及びSBT濃度は共に投与後1時間にピーク (ABPC: 7.3μg/ml, SBT: 6.3μg/ml) を示し, 以後漸減した。血中濃度半減期はそれぞれ約60分, 約50分であった。またABPC・SBT併用投与時よりはるかに高い血中濃度を示したことからprodmgとしてのSBTPCの効果が認められた。ラットにおける血中ABPC及びSBT濃度はほぼSBTPCの投与量に依存していた。
イヌにSBTPCを経口投与した時のABPC, SBT濃度推移もラットとほぼ同様であった。
3. SBTPCをラットに経口投与した場合, ABPC及びSBTは共に各種臓器・組織に広く分布し, 特に肝臓及び腎臓には血中より高い分布が認めら礼血中濃度の減衰につれて臓器・組織内濃度も同様に減衰した。また両薬物の各種臓器・組織への分布傾向は近似した。このときのABPCの血中及びへの分布傾向は近似した。このときのABPCの血中及び組織内濃度の推移はBAPC投与の場合とほぼ同じであった。また, ラットgranuloma pouch内滲出液中へのABPC及びSBTの移行は良好で特続性が認められた。
4. SBTPCをラットに経口投与した時の投与後96時間までの尿中排泄率はおよそABPC20%, SBT30%, 糞中排泄率はそれぞれ5%, 20%であり, またわずかであるが胆汁中へも排泄された。
イヌでもほぼ同様の排泄パターンを示した。なお尿中及び糞中にはABPCSBT以外の抗菌活性を持った代謝物は認められなかった。
5. ABPC, SBT当モル共存下のヒト及び各種動物血清蛋白に対する結合率はそれぞれ単独での結合率とほぼ同じで, ラット血清蛋白に対するSBTの約55%以外はいずれの動物血清に対してもABPCSBTともに約30%であった。
6. SBTPCをラットに連続投与してもABPC及びSBTの血中濃度の上昇, 尿中排泄の増加及び組織への蓄積は認められなかった。
7. SBTPCの経口投与を受けた四塩化炭素惹起肝障害ラットでは健常ラットに比べ血中ABPC, SBT濃度はわずかに低く, 尿中排泄率はやや増加した。
一方, 塩化第二水銀惹起腎障害ラット及び馬杉型糸球体腎炎ラットでは健常ラットに比べABPCSBTの尿中への排泄の抑制がみら礼血中ABPC, SBT濃度が高くなる傾向を示した。
8. ラットにSBTPCを経口投与するとき, SBTPCの塩として用いられたp-toluenesulfonic acid (PTS) は血中のピークがABPCSBTよりやや遅れるが吸収は良好でほとんどの臓器・組織に分布したのち, 投与量のほぼ全量が主として尿中に排泄された。また連続投与による蓄積もみられなかつた。

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© 社団法人日本化学療法学会
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