CHEMOTHERAPY
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42抗菌剤の食細胞の化学発光に及ぼす影響
斧 康雄国井 乙彦
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1989 年 37 巻 5 号 p. 583-590

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抄録

化学発光 (chemiluminescence; CL) は, 貪食殺菌能の鋭敏な一指標である。42抗菌剤の好中球や全血を用いたルミノール依存性CLに及ぼす効果について検討した。
食細胞と種々の濃度の抗菌剤を10分間接触させた後に, 非オプソニン化ザイモザンや. ホルポールミリステートアセテート (PMA) で刺激して20分間の食細胞のCL反応を測定した。
治療域において, sulfamethoxazole (SMX) とtrimethoprim (TMP) は有意にCL反応を抑制した。
Minocycline (MINO) とdoxycycline (DOXY) もまた. 少し高い濃度 (12.5μg/ml以上) でCL反応を抑制した。しかし, β-ラクタム剤 (27剤), アミノ配糖体 (4剤), erythromycin, clindamycin, fosfomycin, vancomycinおよび抗真菌剤 (3剤) は, 治療域においてCLを抑制しなかった。
また, いずれの抗菌剤も, 我々の検討した中では食細胞のCL反応を増強させるものはなかった。
これらの結果は, MINO, DOXY, SMX, TMPは, 臨床的に食細胞の殺菌能を減じることを示唆している。特に, すでに殺菌能に異常を有しているimmunocompromised hostsにおける治療においては, in vitroでCL反応を抑制するこれらの薬剤は, さらに食細胞の機能を減じたり抑制したりするかもしれない。しかし, これらの観察の臨床的意義についてはさらに今後の研究が必要である。

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© 社団法人日本化学療法学会
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