CHEMOTHERAPY
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ニューキノロン薬Y-26611の基礎的ならびに臨床的検討
特にヒトへの外挿時の問題点について
副島 林造小林 宏行熊澤 淨一竹内 正紀
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1993 年 41 巻 1 号 p. 9-23

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抄録

新しく開発されたニューキノロン薬Y-26611の内科および泌尿器科領域の感染症に対する有効性および安全性を検討した。肺炎, 慢性気道感染症および複雑性尿路感染症は1回200mgまたは300mg, 急性単純性膀胱炎は1回100mgまたは200mgを原則として1日2回, 3~14日間服薬することとし, 以下の成績を得た。
1) 総症例数は191例であり, その内訳は内科領域90例 (有効性評価対象例数: 87例) および泌尿器科領域101例 (UTI薬効評価基準判定評価対象例数: 73例) であった。随伴症状評価対象例数は内科領域89例, 泌尿器科領域101例の計190例であった。
2) 臨床効果は, 呼吸器感染症88.2%, 尿路感染症82.7%, 全体として84.3%の有効率であった。また, 1日使用量別の臨床効果は, 呼吸器感染症では400mg群87.9%, 600mg群90.5%, 尿路感染症では200mg群93.9%, 400mg群77.6%であった。
3) 細菌学的効果は内科領域73.3%, 泌尿器科領域92.3%であった。
4) 随伴症状は内科領域23.6%, 泌尿器科領域12.9%, 全体として17.9%に認められた。このうち, アレルギー症状は13.2%であった。
5) Y-26611の経口投与による光毒性試験をマウスおよびモルモットで検討した。マウスでは300mg/kgによっても光毒性は観察されなかった。モルモットでは100mg/kgで光毒性が観察されたが, lomenoxacin (LFLX) より弱かった。一方, モルモットでの経皮投与による光アレルギー試験では, Y-26611はLFLXと同程度の弱い光アレルギー性反応を誘発した。さらに, Y-26611はLFLXと異なり紫外線非照射部位にも紅斑が観察され, 薬剤アレルギーの存在が示唆された。Y-26611は有色ラットでは皮膚への移行性が白色ラットより高く, かつ, その消失が非常に遅かった。
以上の成績より, Y-26611は高い臨床効果を示し, また, 細菌学的効果においても, グラム陽性菌のみならずグラム陰性菌に対しても高い除菌効果を示した。
しかし, 随伴症状, 特にアレルギー症状が多く, 安全性について問題があり, 臨床治験は中止すべきであると判断した。

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