CHEMOTHERAPY
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泌尿器科領域におけるcefozopranの基礎的および臨床的検討
荒川 創一他
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1993 年 41 巻 Supplement4 号 p. 293-308

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抄録

新しく開発された注射用セフェム系抗生物質cefozopran (CZOP) について尿路並びに性器感染症に対する臨床的有用性を検討すると共に, 本試験の中での基礎的検討として尿路感染症に対する抗菌薬の薬効評価に広く使用されているdipslide法に関して, 細菌数算定に及ぼす尿中残存抗菌薬の影響をみる目的で, 本剤投与後の尿中細菌の経日的推移を原尿 (CZOP含有状態) と遠心洗浄処理尿 (CZOP除去状態) の両者で比較し, 以下の結果を得た。
1) Dipslide法における細菌数算定に及ぼす尿中抗菌薬の影響
複雑性尿路感染症5例に本剤を1回0.5~1g, 1日2回, 5日間投与し, 1日目から5日目まで連日早朝に採尿し, 原尿と遠心洗浄処理尿についてdipslide法を用いた尿中細菌数算定と分離培養を行い, 原尿において, 尿中残存抗菌薬の影響によるいわゆる「見かけ上の菌消失」が起こっていないかどうかを検討した。
その結果, 分離菌がCZOPに高度感性 (MIC: 0.05~1.56μg/ml) の場合は, 原尿と処理尿の成績はよく一致し, 両者いずれでも投与1日目ですでに菌は消失していた。中等度感性菌 (MIC: 3.13~100μg/ml) では, 投与初期 (1~3日目) において原尿では検出出来ない菌が, 処理尿で認められる場合 (原尿での見かけ上の消失) があった。
しかし, UTI薬効評価基準の判定日である5日目においては, 原尿と処理尿での成績は5例とも一致していた。
この結果から, 遠心洗浄処理法による検討からみた場合には, dipslide培養により細菌学的効果を評価する際, 投与5日目では特に尿を前処理しないで (すなわち, 従来の方法で), UTI薬効評価基準による判定に使用して差し支えないものと考えられた。
2) 臨床成績
急性単純性腎盂腎炎3例, 複雑性尿路感染症56例, 急性前立腺炎および精巣上体炎各1例, 計61例に本剤1回0.25~1gを, 1日2回, 3~11日間点滴静注した。UTI薬効評価基準による判定では, 急性単純性腎盂腎炎3例はいずれも有効以上, 複雑性尿路感染症の有効率は78% (35/45), 急性前立腺炎1例は著効であった。細菌学的効果 (除菌率) は, 全体で83% (59/71) であった。
精巣上体炎の1例は主治医判定でやや有効であった。
副作用は発赤・水疱を1例に, 臨床検査値異常変動はGOT, GPT上昇などを9例に認めた。

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© 社団法人日本化学療法学会
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