CHEMOTHERAPY
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新規半合成静注用cephem, FK037の外科臨床治験
森本 健木下 博明中谷 守一久保 正二上田 隆美藤本 幹夫
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キーワード: FK037, 外科領域感染症
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1994 年 42 巻 Supplement3 号 p. 289-302

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抄録

新規半合成静注用cephem, FK037について外科領域の臨床試験を行った。
FK037の体内動態試験では乳房切断術後の5例について, FK0371.09を60分で静注し, 血漿中濃度は点滴終了直後で40, 4~68.8μg/mlのピークレベルとなり, 以後漸減し, 7時間では3.2~16.1μg/ml, さらに24時間後ではく0.25~0.7μg/mlとなった。これに対し, seroma内創液中のFK037濃度は2時間から5時間の間で12.2~27.4μg/mlのピークレベルとなり, 7時間後で6.0~14, 2μg/ml, 24時間後でく0.13~4.5μg/mlを示した。血漿中濃度はtwo-compartment modelもしくはone-compartment modelに, seroma内創液中濃度はone-compartment modelによく一致し, AUCは血漿, seroma液でほぼ同等の値を示した。
外科的感染症25例では著効17例, 有効4例, やや有効2例, 無効2例, 有効率84%の結果であった。重症度別では重症例での有効率は低くなる傾向であった (p=0.02)。分離菌別の細菌学的効果判定が行われた28株では消失21株, 不変7株, 消失率75%の結果であった。分離状態別の細菌学的効果判定が行われた13例では消失9例, 減少2例, 不変2例の結果であった。MIC別の消失状況の判定が行われた23株では17株, 74%の消失状況でMICの高い菌が残存する傾向は認めなかった。安全性を評価した26例のうち11例で異常変動が認められ, 好酸球の増多がみられた2者では担当医により本剤との関係があるかも知れないとされた。
以上, FK037は外科領域感染症に使用して高い有効率が期待できる薬剤である。

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