CHEMOTHERAPY
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Biapenemのin vitro抗菌力, 喀痰内移行, 肺組織移行および呼吸器感染症での使用経験
本田 芳宏他
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1994 年 42 巻 Supplement4 号 p. 301-313

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抄録

新しいカルバペネム系抗生物質biapenem (BIPM) の呼吸器由来8菌種に対する抗菌力をceftazidime (CAZ) およびimipenem (IPM) と比較した。また, 肺組織移行および喀痰内移行を検討し, さらに呼吸器感染症例に本剤を投与しその臨床効果, 細菌学的効果並びに安全性を検討した。
Staphylococcus aureus, Pseudomonas aeruginosaに対する本剤の抗菌力はCAZより4-8倍優れIPMと同等, 腸内細菌 (Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Enterobacter cloacae, Serratia marcescens) に対してはCAZ, IPMとほぼ同等の優れた抗菌力を示した。肺切除例9例に本剤300mgを30分で点滴静注した際の肺組織内移行は, 対血漿比0,92から40.2%と幅広い範囲に分布したが, 平均18.0%で良好な移行率であった。呼吸器感染症の6例で本剤300mgを60分で点滴静注後の喀痰内移行は血漿内濃度との比較で最大移行比1.89-12.48%(平均6.3%) と良好な移行率であった。
肺炎30例, 肺化膿症4例, 気管支拡張症2例, 慢性気管支炎および肺気腫各1例の計38例に本剤を1日300-1200mg, 2-15日間投与して著効12例, 有効21例, やや有効2例および判定不能3例で有効率94.3%であった。副作用は認められなかった。臨床検査値ではGOT, GPTの上昇が5例, GPTおよび好酸球の上昇が1例に認められたが, いずれも軽度であった。
以上の様にグラム陽性菌からグラム陰性菌まで幅広い抗菌スペクトラムを有し, 優れた抗菌力を示すBIPMは肺組織および喀痰内に良好な移行性を示し, 呼吸器感染症において安全かつ有力な第一選択薬剤と考えられる。

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