CHEMOTHERAPY
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Biapenemの基礎的・臨床的検討
柴 孝也前沢 浩美吉田 正樹酒井 紀齋藤 篤
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キーワード: 体内動態
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1994 年 42 巻 Supplement4 号 p. 322-329

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抄録

新しく開発された注射用カルバペネム系抗生物質であるbiapenem (BIPM) の基礎的・臨床的検討を行い, 以下の成績を得た。
1. 薬物動態:
健康成人男子志願者6名を対象にBIPM 30mgを1回点滴静脈内投与した際の血中濃度および尿中排泄の経時的推移を検討した。また, 本剤の腎からの排泄機構を知る目的でprobenecid併用時ならびに非併用時の血中および尿中動態への影響をcross over法にて検討した。
BIPM単独投与時の最大血中濃度 (Cmax) は26.2±6.62μg/ml, β相血中半減期 (T1/2β) は1.09±0.18h血中濃度曲線下面積 (AUC) は33.2±5.79μg・h/ml, 定常状態分布容積 (Vdss) は12.1±2.891, 全身クリアランス (Cltot) は926±1.651/hであり, 尿中総排泄率は点滴開始後12時間までに71.4±7, 69%であった。probenecidを併用した場合, BIPMのCmax (28.1±483μg/ml), T1/2β(1.09±0.12h), Vdss (10.3±2.001) に影響を及ぼさなかったがAUC (39.2±6.82μg・h/ml) の増大, Cltot (7.85±1.331/h) の減少が認められた。probenecid併用のために尿量の増加による尿中濃度に差を認めたものの, 尿中排泄率は71.8±8.65%とほぼ同様の値であった。
BIPMは良好な血中および尿中移行性を示し, またprobenecid併用時においても本剤の薬動力学的パラメータの変化が少ないことから, 本剤の排泄は主に糸球体濾過によることが示唆された。
2. 臨床成績:
細菌性肺炎, 尿路感染症, 肝膿瘍および敗血症の計4例にBIPM 1日300~600mgを4~15日間使用し, 有効3例, 判定不能1例の臨床成績を得た。細菌学的効果は分離し得たKlebsiella sp, Stcphylococcus aureus, Pseudomonas aeruginosa, Enterococcus faecalis, Serratia sp. 各1株はいずれも除菌された。副作用および臨床検査値異常は全例何等認められなかった。

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