CHEMOTHERAPY
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新カルバペネム系抗菌薬biapenemの嫌気性菌に対する抗菌力およびマウス盲腸内細菌叢への影響
加藤 直樹加藤 はる田中 保知田中 香お里渡辺 邦友上野 一恵
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1994 年 42 巻 Supplement4 号 p. 55-63

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抄録
新カルバペネム系抗菌薬biapenem (BIPM) の嫌気性菌に対するin vitro抗菌力を他のカルバペネム系およびセフェム系抗菌薬と比較検討した。BIPMは参考菌株を用いた検討において幅広い抗菌スペクトラムを示し, 多くの菌種に対して0.78μg/ml以下のMICであった。このBIPMの成績はmeropenem (MEPM) やimipenem (IPM) にはやや劣るものの, latamoxef (LMOX) やceftazidime (CAZ) よりは勝っていた。また, インドール陽性のBacteroides fragilis groupに対してはBIPMはIPMより優れた抗菌力を示した。新鮮臨床分離株を用いた検討においては, 90%のB. fragilisに対するBIPMのMIC (MIC90) は1.56μg/mlで, MEPMには劣るもののIPMとは同等であった。Bacteroides thetaiotaomicronに対するBIPMのMIC90は0.78μg/mlで, 使用抗菌薬中最も強い抗菌力を示した。また, BIPMはPeptostreptococcus属に対してはIPMやMEPMには劣る成績であったが, Mobiluncus属やClostridium perfringensに対しては最も優れた抗菌力を有していた。B. fragilisの産生するβ-ラクタマーゼの内, oxyiminocephalosporinase (CXase) I型に対してはBIPMは酵素学的に安定で, 本酵素を産生する菌株に対するMICは低かった。CXaseII型には他のカルバペネム薬よりは安定であったものの, この酵素を産生する菌株に対するMICは200μg/mlで抗菌力はほとんど認められなかった。本薬剤連続投与によるマウス盲腸内でのClostridium difficileの異常増殖の実験では, IPMとほぼ同様に投与終了1日目にC. difficileの高菌数が認められたが.7日目には検出菌数は減少した。BIPMは嫌気性菌全体に幅広く, 非常に強いin vitro抗菌力を有することから, 臨床的にも嫌気性菌感染症に極めて有効であることが示唆された。
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© 社団法人日本化学療法学会
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