近年、両生類の急速な減少が世界的に進行しており、生物多様性保全の重要課題とされている。その主要因として、両生類に特異的な感染症「カエルツボカビ症」の蔓延が指摘されている。わが国でも2006年12月に本菌に感染し発症した両生類が発見され、侵入感染症による国内両生類の絶滅の危機が懸念され、マスコミ報道されるほど大きな騒ぎとなった。本菌の侵入実態と在来両生類に対するリスクを評価するために国立環境研究所では、麻布大学と共同で緊急にカエルツボカビの検査体制を整えた。2007年2月より全国レベルで両生類の感染状況を調査した結果、本菌は野外の在来両生類にも感染していることが明らかとなった。さらにカエルツボカビのDNA分析の結果、日本国内の本菌には高い遺伝的多様性と固有性が存在することが示された。これらの結果からわれわれは「カエルツボカビ・アジア起源説」を提唱した。