地球環境
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臭素系難燃剤によるアジア-太平洋地域の汚染
田辺 信介磯部 友彦
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2014 年 19 巻 2 号 p. 125-134

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抄録

ストックホルム条約の締結により、世界の多くの国々はPCBs(ポリ塩化ビフェニル類 )やDDTs(ジクロロジフェニルトリクロロエタン類 )など Legacy POPs( 既存の残留性有機汚染物質 )と呼ばれる有機塩素化合物の生産・使用・流通・廃棄を禁止したが、その環境汚染は今なお継続しており、解決すべき課題は依然として多い。また、近年ではプラスチック製品や繊維製品に添加された臭素系難燃剤(BFRs)による地球規模の環境汚染と生態系への影響が懸念されている。とくにアジア地域では急速な工業化・都市化にともない物流が活性化し、先進諸国からの中古家電・電子機器等の輸入量が増大するとともに、その不適正な廃棄・処理による BFRs 汚染の拡大が危惧されている。 しかし、これらの物質の環境モニタリング調査が本格化したのは2000 年代中盤以降であったため、汚染実態の解明やばく露リスクの評価等に関する研究はいまだ途上にある。アジアの発展途上国では、廃棄物処理施設などのインフラや汚染防止対策等にかかわる法規制の整備が遅れているため、BFRs による汚染の実 態把握は急務と考えられる。本稿では、Emerging POPs(新規残留性有機汚染物質)と呼ばれる臭素系難燃剤に注目し、アジア - 太平洋地域の生物汚染について明らかにした研究成果を論述した。

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© 2014 一般社団法人国際環境研究協会
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