2023 年 28 巻 2 号 p. 233-240
「災害発生後の残留物質の監視を効率的かつローコストで面的に展開することを可能とするサンプリング手法の開発」では,外部電源の供給が不要で設置場所を選ばないセミアクティブサンプラーによる大気サンプリング法を開発した。汚染地に残留し再揮発する可能性のある半揮発性の化学物質を効果的に捕集するためポリジメチルシロキサン(PDMS)を吸着材に採用し,通気量を制御することで大気濃度の推算が可能な乾電池で2 週間以上駆動するパッシブサンプラーを開発した。「副生物や反応生成物など事故等から直接に想定される以外の物質も捕捉可能な新たな網羅分析法とデータ解析手法の開発」では,高分離・高分解な包括二次元ガスクロマトグラフ-飛行時間型質量分析計(GC×GC-ToFMS)による網羅分析とそこから得られる膨大な精密質量情報を解析することで,未知物質も含めた物質群全体の掌握を図ることを計画した。熱脱離法(TD)により大気や水質試料を直接GC×GC-ToFMS に導入する方法により,試料調整過程における物質ロスを極力抑えることに成功し,包括的・網羅的な分析が可能になった。現場試料測定のための最適化を行った後,ケーススタディを通して,開発手法が包括的かつ物質検索可能であることを確認した。