智山学報
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Saptamatrkaと密教 : matrka考
宮坂 宥勝
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1990 年 39 巻 p. 1-27

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抄録

サプタマートリカー(Saptamatrka=Sm. 七母天、七女神)は、密教では胎蔵(界)曼茶羅最外院に配する。諸種の胎蔵曼茶羅において、その名称、方位などは必ずしも一定せず、またそれらを比定した従来の諸研究には多くの問題がある。『理趣経』(百五十頌般若)には七母天段(第十三段)があり、七母天集会曼茶羅が伝えられる。また、七巻本『理趣経』外金剛部儀軌十二分には八母天集会曼茶羅を説く。Sm.の起源は『リグ・ヴェーダ』に求められ、大叙事詩『マハーバーラタ』などの叙事詩、さらにはヒンドゥー教プラーナ文学にも、しばしば登場する。さらに母神信仰として遙か遠く、最古代インドのインダス文明時代まで遡り得る。Sm.の他に、四女神、八女神、十六女神、三十二女神、六十四女神、百八女神などがあり、Matrgana(女神群、母衆)は雑密経典、ヒンドゥー教諸文献などに通じてみられる。これらの思想史的背景と母神信仰の流れを考察してみたい。なお、ヒンドゥー教におけるSm.に関する二、三のサンスクリット文献・参考書の披見は立川武蔵博士のご援助を頂いたことを記して、謝意を表する。

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1990 智山学報
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