智山学報
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「仲介者」概念をめぐって(智豊合同教学大会紀要)
大塚 秀見
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1997 年 46 巻 p. 237-245

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抄録

宗教類型論は、さまざまな宗教現象を分類、整理することによって、宗教現象の意味、特質を探ろうとするものである。しかし、宗教現象は、それぞれの宗教の基盤の違いから、同一のレベルで分類することが、なかなか難しい。一つの宗教を基準にすると、他の宗教の本質を見失うことになりかねない。その点で、初期の比較宗教学は、意識するとしないとにかかわらず、キリスト教を基準に比較、分類を行っていたと言えよう。そうした反省から、近年の宗教学は、それぞれの宗教現象に合わせた区分、整理を試みている。そのため、類型化は、限りなく細分化される傾向にあるといえよう。しかし、細分化は、比較することから、それぞれの特質を見いだそうとする本義から遠ざかることになる。なぜなら、それぞれの宗教現象が個々別々のものとして認識され、その結果、宗教現象の単なる記述という、宗教史の領分に近づくことを意味するからである。本論文では、「仲介者」という類型を導入することによって、「聖職者」「教師」と呼ばれる、信者一般とは区別される「宗教者」の枠組みを考える。この作業によって、大項目の比較宗教学と、細分化された宗教類型論との中間の在り方を試みる。

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1997 智山学報
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