2020 年 69 巻 p. 149-202
本考察では特に智山声明の「理趣経」と「五悔」を中心に中曲旋法を考察した。考察の結果、中曲旋法には平調中曲旋法と黄鐘中曲旋法がある。平調中曲旋法は反音旋のみで構成され黄鐘中曲旋法は反音旋と唯呂旋で構成される。平調中曲旋法は平調調の同調間の呂律の交代で構成され黄鐘中曲旋法は黄鐘調の同調間の呂律の交代と一越唯呂旋で構成される。平調中曲旋法は平調反音曲と呼ばれ黄鐘中曲旋法が「黄鐘中曲」と呼ばれていると考える。黄鐘中曲旋法は反音曲でいえば一越反音曲であると考える。以下、中曲旋法について詳しく述べる。