2020 年 69 巻 p. 489-508
浄厳述『臨終大事影説』は、浄厳(一六三九~一七〇二)が霊雲寺における口述を観輪という僧侶が聞き書きしたものであり、江戸時代の真言宗の臨終行儀について詳細に説かれている文献である。
現在、確認できる写本は、京都大学の図書館に所蔵されている『臨終大事影説』と、智積院に所蔵されている『臨終大事私記』との二本の存在が確認されている。本論では京都大学蔵本の『臨終大事影説』を底本として扱い、智積院所蔵の『臨終大事私記』と校訂していき、翻刻をしていく。そして、『臨終大事影説』に説かれている内容を確認していきながら、他の真言宗諸師における臨終行儀と比較して、『臨終大事影説』の特徴を見出すことが本論の目的である。