抄録
創薬において,活性化合物に重要な特性を抽出したファーマコフォアモデルを構築することは,新規活性化合物獲得の観点で有用である.本研究では,熱帯病の一種シャーガス病を引き起こす原虫Trypanosoma cruziのジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼ (TcDHODH)を標的とし,非経験的量子化学計算を行うフラグメント分子軌道(FMO)法を用いてファーマコフォアモデルを構築した.TcDHODHと基質であるオロト酸,既知の阻害剤であるオキソン酸,阻害活性をもつ43種のオロト酸誘導体それぞれとの相互作用を計算し比較した結果,ファーマコフォアとなる4点の共通した相互作用と1点の特徴的な相互作用が得られた.また,この特徴的な相互作用はHuman DHODHとの特異性をもたらす可能性も示唆された.