中部日本整形外科災害外科学会学術集会 抄録集
第105回中部日本整形外科災害外科学会
セッションID: 1-B-S-1
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S-03 脊髄損傷の病態と治療
脊髄損傷の病態におけるCXCケモカインの役割
廣橋  紀芝 啓一郎西庄 武彦井上 智人藤内 武春
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抄録

【目的】インターロイキン(IL)-8は,強力な好中球の走化,活性化因子である.これまでに脳血管損傷の病態との関わりが検討され,抗IL-8抗体による脳浮腫の軽減効果が報告されている.今回,脊髄損傷後の病態とIL-8やヒトIL-8に相当するラットcytokine-induced neutrophil chemoattractant(CINC)-1等のCXCケモカインとの関わりを臨床的並びに実験的に検討した. 【対象と方法】脊髄損傷患者60名を対象とし,脊髄疾患のない患者70名を対象群とした.Frankel分類により神経損傷の重症度を判定し,急性期の髄液中のIL-8濃度を定量した.またラット脊髄損傷モデルを用いて,CINC-1産生の経時的変化と神経損傷の重症度との相関を調べた.さらに,好中球エラスターゼの特異的阻害剤であるONO-5046のCINC-1産生,血液脳関門障害の抑制効果及び神経損傷軽減効果を調べた. 【結果】対象群でIL-8は検出されなかった.脊髄損傷群においては,受傷当日から1日目に最高値に達し,Frankel A群は他のどの群よりも有意に高い値を示した. CINC-1は1時間後より産生が増え始め,6時間後に最大値33ng/g脊髄に達した.臨床例の結果と同様,CINC-1産生量も神経損傷度と相関した.ONO-5046(10g/Kg)の前投与により,CINC-1の産生量及び血液脳関門障害は約50%減少し,神経損傷の程度が有意に軽減した. 【考察】脊髄損傷の後,実質内へ侵入した白血球は蛋白分解酵素などを放出し神経組織を破壊する.今回の検討により,ケモカインは脊髄損傷後の病態にも関っていることが示唆された.

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© 2005 中部日本整形外科災害外科学会
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