抄録
【はじめに】比較的稀な母趾趾節間関節脱臼は、一般的に徒手整復が不能である。我々は、種子骨が整復障害因子となり観血的整復術を必要とした症例を経験したので報告する。【症例】68歳の男性で、浅瀬を歩行中に左母趾趾節間関節の背屈を強制され受傷した。X線像上、種子骨陥入を伴った母趾趾節間関節の背側脱臼を認めた。徒手整復を試みたが整復できなかったため腰椎麻酔下に母趾趾節間関節の背側を展開した。術中所見は、基節骨の骨頭に種子骨が乗り上げていた。plantar plateは、確認できなかった。ここで種子骨と基節骨骨頭の間をエレバトリウムで起こすことで容易に整復できた。整復後に内外反の不安定性は認めなかった。しかし、母趾趾節間関節を背屈することにより、容易に再脱臼したため、母趾趾節間関節をK-wire1本で仮固定した。3週間後に抜釘した。【考察】本例では、両側の側副靭帯の緊張が強く、牽引操作では関節裂隙を開くことはできなかった。したがって、母趾趾節間関節脱臼は、徒手整復できたという報告もあるが、暴力的な整復は避けるべきであり、ほぼすべての症例で観血的整復術を念頭に置く必要があると考えた。