2021 Volume 61 Issue 6 Pages 407-408
拝復
私どもの論文「抗N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体脳炎後に発症した薬剤抵抗性てんかんに対して,緩和的外科的治療が有用であった2症例」1)に関して極めて重要なご指摘をいただき,ありがとうございました.
この報告で私どもが最も主張したかった点は,自己免疫性脳炎の範疇にある病態で,難治性(薬剤抵抗性)てんかんを合併した場合に,外科的治療を行うことによって,てんかんがコントロールされる症例が存在するので,自己免疫性脳炎では一般的ではないものの外科的治療をためらうべきではないという点でありました.
しかし,先生がご指摘の通り,抗NMDA受容体脳炎の診断に関して問題がありました.抗 NMDA受容体脳炎は,GluN1サブユニットのアミノ末端ドメイン上にある立体的エピトープを認識する抗体によって生じる疾患であり2),診断は現在検査会社でも実施可能となったcell-based assayでの測定が必要です.抗NMDA受容体抗体は,神経細胞のシナプス後膜に発現するNMDA受容体の立体構造に反応するため,立体構造を保持した受容体抗原が必要であり,そのために培養細胞表面に生体内と同様の抗原構造を持つ受容体を発現させて測定するcell-based assayが要求されます3).
ご指摘の通り,私どもが計測したELISA法によるNMDA受容体に対する抗体,抗GluRε2抗体,Gluδ2抗体は個々のサブユニットを抗原として検出するもので,いわゆる「広義の抗NMDA受容体抗体」であり4),上記のcell-based assayにより検出される抗体とは異なるものであります.今後はこの「抗グルタミン酸受容体抗体陽性脳炎」と「抗NMDA受容体脳炎」を明確に区別していきたいと存じます.先生におかれましては,診断に関しての重要なご指摘をいただき,ありがとうございました.
敬具
※著者全員に本論文に関連し,開示すべきCOI状態にある企業,組織,団体はいずれも有りません.