Rinsho Shinkeigaku
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Letters to the Editor
Does ‘IgG4-related leptomeningitis’ exist?
Akiyuki Hiraga
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2022 Volume 62 Issue 12 Pages 952-953

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2022年6月17日

拝啓

本誌62巻6号に掲載されました別府祥平氏らの「認知機能低下で発症し,軟膜・脳実質病変を認めたIgG4関連疾患の1例」(臨床神経2022;62:469-474)1を興味深く拝読しました.免疫グロブリンG4(immunoglobulin G4,以下IgG4と略記)陽性形質細胞の浸潤をみとめた軟膜炎では,高IgG4血症がないことと,花筵状線維化と閉塞性静脈炎はほとんどみられないという共通点があるという指摘は重要です.この点は,典型的なIgG4関連疾患とは異なります.軟膜炎がIgG4関連疾患のスペクトラムに含まれるか?という点について考察します.

IgG4陽性形質細胞の浸潤をみとめた軟膜炎の6例1中,我々が症例2を報告した2015年までの3例では,2例は関節リウマチがありました.我々の1例2は関節症状はなく,血清リウマチ因子は正常でしたが,血清抗環状シトルリン化ペプチド(cyclic citrullinated peptide,以下CCPと略記)抗体が著明な高値でした.別府氏らも記載しているように,IgG4陽性形質細胞の組織への浸潤は関節リウマチでもみられるため,この3例はリウマチ性髄膜炎の可能性が否定できないと考えられました.別府氏らの症例も含めたその後の3例では,2例は血清抗CCP抗体の記載がなく,残りの1例3のみで血清抗CCP抗体が陰性でした.しかし,この血清抗CCP抗体が陰性の症例3は,MRIの造影増強効果は硬膜が主体です.リウマチ性髄膜炎の頭部MRI所見は,軟膜の造影増強効果とfluid attenuated inversion recovery画像でのくも膜下腔の高信号の2点が特徴的4であり,IgG4陽性形質細胞の浸潤をみとめた軟膜炎と共通しています.リウマチ性髄膜炎では,髄膜炎が関節リウマチの発症(関節症状)に先行することも稀ではなく,血清リウマチ因子は正常で抗CCP抗体が陽性であるリウマチ性髄膜炎も報告されています5.また,リウマチ性髄膜炎は病理組織学検査で形質細胞の浸潤はみられるものの,血管炎やリウマトイド結節を証明できない症例も多いと報告されています5.近年,脳脊髄液の抗CCP抗体はリウマチ性髄膜炎の診断と治療効果の指標になりうることが報告されています4.抗CCP抗体はIgG1とIgG4のサブクラスが優位とされており,我々は抗CCP抗体とIgG4陽性形質細胞の浸潤が関連している可能性2を考えています.以上より,IgG4陽性形質細胞の浸潤をみとめた軟膜炎であっても,関節リウマチがなく血清抗CCP抗体が陰性である症例が存在しないと,IgG4関連軟膜炎が存在するとは言えないと考えます.別府氏らの症例は血清リウマチ因子は正常ですが,血清抗CCP抗体の記載がありません.もし,別府氏らの症例の血清抗CCP抗体が陰性であれば,真のIgG4関連軟膜炎の可能性があり,症例の重要度がより高まると考えられます.

別府氏らが指摘しているように,原因不明の軟膜炎では,ステロイドが有効である病態を鑑別にあげて,脳生検を考慮する必要があります.私はさらに,原因不明の軟膜炎では,血清抗CCP抗体を測定することと,脳生検をする場合はIgG4染色を施行すること,の2点を推奨します.以上,私見を申しあげました.

敬具

Notes

※著者に本論文に関連し,開示すべきCOI状態にある企業,組織,団体はいずれも有りません.

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© 2022 Japanese Society of Neurology

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