Rinsho Shinkeigaku
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MR findings of the inflammatory demyelinating diseases of the central nervous system
Hiroyuki TatekawaYukio Miki
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2023 Volume 63 Issue 7 Pages 425-432

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要旨

中枢神経性の脱髄疾患におけるMRI検査は大きく分けて,診断,イメージングバイオマーカー,治療薬による副作用の早期発見の三つの役割がある.脱髄疾患は疾患によって病変の部位・大きさ・形状・分布・信号強度・造影パターンが異なるため,画像所見を注意深く把握し鑑別診断や活動性の評価を行う必要がある.また,軽微な神経学的所見と非特異的な脳病変から脱髄疾患と誤診されてしまう場合や,副作用の画像所見が通常とは異なる場合があるため典型的な画像だけでなく,非典型画像所見についても熟知しておく必要がある.本稿では画像検査の役割と脱髄疾患における画像所見の特徴,最近の知見について概説する.

Abstract

When demyelinating disease of the central nervous system is suspected, MR examination has mainly three roles: diagnosis, imaging biomarkers, and early detection of adverse effects from therapeutic agents. Because the location, size, shape, distribution, signal intensity, and contrast pattern of the brain lesions on MRI vary depending on the demyelinating diseases, careful attentions are required to assess the differential diagnosis and activity. It is necessary to be familiar with not only typical imaging findings but also atypical findings of demyelinating disease since minor neurological findings and nonspecific brain lesions may lead to misdiagnosis of demyelinating disease. This article reviewed the characteristics of MRI findings and showed recent topics of the demyelinating diseases.

はじめに

脱髄疾患は多発性硬化症(multiple sclerosis,以下MSと略記),視神経脊髄炎関連疾患(neuromyelitis optica spectrum disorder,以下NMOSDと略記‍),myelin-oligodendrocyte glyco­protein(MOG)抗体関連疾患(MOG antibody-associated disease),急性散在性脳脊髄炎(acute disseminated encephalo­myelitis,以下ADEMと略記)が代表例として知られており,疾患によって病変の部位・大きさ・形状・分布・信号強度・造影パターンが異なる.本稿では画像検査の役割とこれらの疾患における画像所見の特徴,最近の知見について概説する.

1. 中枢神経性脱髄疾患における画像検査の役割

(1) MRI検査の役割

中枢神経性の脱髄疾患における画像検査,特にMRI検査は大きく分けて三つの役割がある.

一つ目に診断としての役割がある.脱髄疾患は早期に治療開始した方が長期予後がよいとされ,また疾患によって治療方針や使用する薬剤が異なり,適切な治療薬を投与しないと効果が無いだけでなく病勢が増悪することがある.そのため正確な診断をつけることは重要である.MRIでは病変の有無・分布・形態・性状を把握できるので,これらの特徴をとらえることは脱髄疾患の鑑別診断に有用であり,各種脱髄疾患の診断基準においてもMRI所見は重要な位置づけにある1

二つ目に脱髄疾患におけるイメージングバイオマーカーとしての役割がある.実臨床においても,使用中の治療薬がその患者に有効であるかどうかの判定にMRIは有用とされ,新薬の治験の効果判定においても患者の症状改善の有無・程度の評価とともに,画像での定量解析が行われている.研究目的においても,種々の特殊MRI撮像法が,顕微鏡的変化の検出や髄鞘障害の定量化などに利用されている2

三つ目に副作用の早期発見という役割がある.近年,MSにおいてナタリズマブやフィンゴリモドなどの有効性の高い疾患修飾薬が使用されるようになっているが,稀に進行性多巣性白質脳症(progressive multifocal leukoencephalopathy,以下PMLと略記)などの重篤な副作用を発症することがあり,その早期発見にもMRIは有用とされる.

(2) MRI検査の撮像法

中枢神経脱髄疾患の病変は小さいものも多く,MRIの撮像には1.5 T以上の磁場強度(できれば3 T)の装置を用い,3 mm以下の薄いスライスでの撮像が推奨されている.大脳白質病変の評価にはT2強調像やfluid-attenuated inversion recovery(FLAIR)像が利用される.FLAIR像では脳室周囲病変や皮質下白質病変を観察するのに特に優れており,矢状断の画像では脳梁病変の観察が容易に行える.T1強調像では軸索消失など組織学的変化が強い病変が低信号で描出され,診断及び経過観察に有用である.活動性の高い病変の多くは造影後に増強効果を示すため,造影剤の使用は診断だけでなく疾患活動性をみるのにも有用である.また,拡散強調像でも脱髄などの活動性の高い病変で高信号を示すことが多く,病勢の評価に有用であり,また,急性期梗塞などの他疾患との鑑別やPMLの早期診断にも利用できる.Double inversion recovery(DIR)法を用いた画像やmagnetization-prepared rapid acquisition gradient-echo(MPRAGE)法などのgradient echo法による3次元T1強調像は,皮質病変を検出するのに有用と報告されている.皮質病変の有無は脱髄疾患の鑑別に重要であり,最新版のMSの診断基準にも含まれている.

脊髄病変の評価にはspin echo法のT2強調像の矢状断と軸位断での観察が基本となり,脊髄内での分布や頭尾方向への広がりを調べる.脳脊髄液の拍動に伴うアーチファクトを抑えるためgradient echo法のT2強調像を用いた場合,spin echo法と比べて髄内病変の描出感度が下がるため注意が必要であ‍る.

視神経の評価においてshort TI inversion recovery(STIR)法や脂肪抑制の造影画像の冠状断を用いると視神経の信号異常の認識が容易となる.

MAGNIMS consensus guidelineで推奨されている脳,脊髄MRI撮影シークエンスをTable 1, 2に示す3

Table 1  Standardized protocol for brain MRI.
必須シークエンス 軸位断 T2-FLAIR/T2強調像 and/or プロトン密度強調像
矢状断 2D or 3D T2-FLAIR像
2D or 3D 造影後T1強調像
追加シークエンス 2D or 3D 非造影T1強調像
2D and/or 3D DIR像
軸位断 拡散強調像

FLAIR, fluid-attenuated inversion recovery; DIR, double inversion recovery.

Table 2  Standardized protocol for spinal cord MRI.
矢状断 必須シークエンス T2強調像 and プロトン密度強調像
STIR像(プロトン密度強調像の代わりとして)
造影後T1強調像(T2強調像で異常がある場合)
追加シークエンス Phase-sensitive inversion recovery(STIR像の代わりとして)
軸位断 追加シークエンス 2D and/or 3D T2強調像
造影後T1強調像

STIR, short-tau inversion recovery.

(3) MRI読影のポイント

中枢神経性の脱髄疾患は疾患によって病変の部位・大きさ・形状・分布・信号強度・造影のされ方が異なるため,画像所見を注意深く把握する必要がある.また軽微な神経学的所見と非特異的な脳病変を脱髄疾患と誤診してしまうこともあるため,典型的な画像所見について熟知しつつ,かつ非典型的な画像所見も把握しておく必要がある.脱髄疾患の診断では画像での経時変化を捉えてはじめて時間的多発性が証明されて確定診断に至ることもあるため,無理に1回のMRIのみで診断しようとせず,適宜間隔(3~6ヶ月)をあけて画像検査を行ったほうがよい場合も多い.

2. 多発性硬化症の画像診断

(1) McDonald criteriaでの画像所見の位置づけ

MSの診断には空間的多発性(dissemination in space,以下DISと略記)と時間的多発性(dissemination in time,以下DITと略記)を証明する必要があり,MSの国際診断基準であるMcDonald criteriaでは,臨床所見及びMRI所見をもとに診断を行う.2017年に改訂されたMcDonald criteriaでは,2010年のMcDonald criteriaを踏襲しつつ,主に以下の3点が改訂された.

①MRIでDIS及びDITの評価をする際に無症候性だけでなく症候性のT2高信号病変でも評価可能となった.

②皮質病変も皮質下白質病変とともにDISの病変として認められた.

③DITに必要な増悪の回数の1回分を髄液oligoclonal bands(OCB)陽性で代用できるようになった(日本人のMSではOCB陽性率が約60%と欧米に比べて低いことに注意が必要である).

ただし,McDonald criteriaはあくまで脱髄疾患が疑われた場合にMSと確定診断するための診断基準であり,鑑別診断目的の診断基準ではない点にも留意すべきである.最新のMcDonald criteriaをTable 3, 4に示す45

Table 3  The 2017 McDonald criteria for diagnosis of multiple sclerosis in patients with an attack at onset.
臨床的増悪 客観的病変数 診断に必要な追加事項
2回以上 2個以上 なし
2回以上 1個(これに加えて解剖学的に他部位の病変に由来する過去の明らかな増悪を示す病歴) なし
2回以上 1個 MRIによるDISの証明または異なる病巣に由来する臨床的増悪
1回 2個以上 MRIによるDITの証明または2回目の臨床的増悪または髄液OCB陽性
1回 1個 MRIによるDISの証明または異なる病巣に由来する臨床的増悪に加え,MRIによるDITの証明または2回目の臨床的増悪または髄液OCB陽性

MRIにおけるDIS:脳室周囲白質,皮質あるいは皮質下白質,テント下,脊髄の4領域のうち二つ以上の領域において1個以上のT2高信号病変(症候性,無症候性問わない)を認めること.

MRIにおけるDIT:ある時点でのガドリニウム造影MRIにおいて増強病変と非増強病変の両方の存在(症候性,無症候性を問わない),もしくは,ある時点のMRIと比べて再検したMRIにおいて新たなT2高信号病変またはガドリニウム増強病変の出現.

MRI, magnetic resonance imaging; DIS, dissemination in space; DIT, dissemination in time; OCB, oligoclonal bands.

Table 4  2017 McDonald criteria for diagnosis of multiple sclerosis in patients with a disease course characterised by progression from onset (primary progressive multiple sclerosis).
1年間にわたる進行性の増悪および以下のうち二つを満たす
 1.脳室周囲白質,皮質あるいは皮質下白質,テント下のうち,1領域以上に1個以上のT2高信号病変
 2.脊髄に2個以上のT2高信号病変
 3.髄液oligoclonal bands陽性

T2高信号病変は症候性,無症候性を問わない.

(2) MSの画像所見

1)Ovoid lesion/Dawson’s finger lesion(Fig. 1A):側脳室壁に対して垂直に伸びる3 mm以上の卵円形の脳室周囲白質病変でMSによくみられる所見であるが,虚血性病変などでも同様の形状の病変が見られることがあるため特異性は高くない.側脳室から垂直に走行する髄質静脈周囲の炎症を反映するとされ,磁化率強調像などで内部を貫通する拡張した静脈(central vein sign)が確認されることがある.

Fig. 1 Multiple sclerosis (MS).

A. Ovoid lesion (arrows), B. T1-black hole (arrows), C. Callosal-septal interface lesion (arrows) and ovoid lesion (arrowheads), D. Isolated U-‍fiber lesion, E. Open ring sign (arrow).

2)T1-black hole(Fig. 1B):MSの白質病変がT1強調像で低信号を呈することがあり,慢性期病変でみられる.軸索の消失や強い脱髄を反映し,臨床症状との相関も強いとされるが,急性期の病巣でも浮腫のためにT1強調像で低信号を呈することがあり,真のT1-black holeと判定するためには6ヶ月以上低信号が続くことを確認する必要がある.

3)Callosal-septal interface lesion(Fig. 1C):脳室と垂直方向に脳梁下部から脳梁内に広がる病巣で,MSの診断において感度・特異度ともに高いとされる.

4)Isolated U-fiber lesion/juxtacortical lesion(Fig. 1D):皮質下白質に沿った線状~カーブ状の病巣で,皮質下白質に沿って走行する静脈周囲の炎症を反映するとされる6

5)Cortical lesion:慢性期の高次機能障害と関連するとされ,DIR法などを用いると皮質病変を捉えやすくなる.MSに特異的な所見であり,前述の2017年に改定されたMcDonald criteriaでは空間的多発性を証明する病巣の一つに加えられ‍た.

6)Dirty-appearing white matter:脳室周囲の白質にT2強調像でびまん性に淡い高信号域を呈する.顕微鏡的な脱髄,軸索消失やグリオーシスを反映するとされる.ただし,一見正常に見える白質(normal-appearing white matter)にも軽微な病理学的変化が存在するとされる.

7)T1-hyperintense lesion:病巣の辺縁がT1強調像で軽度高信号を呈することがあり,活動性の高い病巣を反映するとされる.

8)Iron rim lesion:高磁場MRI装置で撮像した磁化率強調像やT2*強調像で,病変の辺縁に鉄沈着を反映した低信号がみられることがあり,慢性活動性病変(くすぶり炎症性脱髄)を示唆するとして最近注目されている7

9)Enhancing lesion:活動性の高い病変では血液脳関門の破綻のためガドリニウム造影により増強されることが多いため疾患の活動性を知る指標となる.病巣全体が造影されることもあるが,病巣周囲の炎症を反映してリング状あるいはリングの一部が途切れた増強効果を呈することがあり(Fig. 1E, open-ring sign),MSに特徴的な所見とされる.一つの病巣の造影増強効果は通常6ヶ月以内に消失する.

10)Tumefactive MS:病変のサイズ(直径2 cm以上),周囲のmass effect,造影増強効果などから一見脳腫瘍のような所見を呈するが,open-ring signが見られること,単純CTで低濃度であることなどが鑑別の一助となる.

11)Brain atrophy:発症早期から軽度の脳萎縮が見られることがあり,萎縮の程度は慢性期に顕著となる.定量解析により白質よりも灰白質の萎縮の程度が強いことがわかっている.萎縮は非可逆的な組織消失を反映すると考えられているが,ステロイド・インターフェロン・ナタリズマブなどによっても一時的に脳の体積が減少することがある.

12)脊髄病変:MSの脊髄病巣は後述するNMOSDと異なり,矢状断像で頭尾方向への進展は短く,横断像では側索や後索を含む脊髄の外側後部辺縁優位に分布する.

13)視神経病変:T2強調像やSTIR像で高信号を呈する.急性期には視神経の腫大と造影増強効果を呈し,視神経鞘に及‍ぶことがあるが,慢性期には視神経の萎縮をきたすことがある.

(3) MSの治療に伴う合併症

MSに対する治療において,疾患修飾薬の副作用によるPMLや小脳顆粒細胞障害の発症,tumefactive MS様所見の出現の報告がされている.ナタリズマブ投与に関連したPMLでは症状が出現する前に画像で異常がみられることがある.無症状のうちにナタリズマブの投薬中止などの対処・治療を行うと予後が良いと報告されているため,PMLのより早期の段階での診断が重要となる.

ナタリズマブ関連PMLのMRI所見はacquired immuno­deficiency syndrome(AIDS)に伴うPMLで皮質下白質病変がみられやすいのと異なり,深部白質に散在性にみられることが多く,T2強調像やFLAIR像で点状・粟粒状の高信号域を伴った境界不明瞭な融合像を示す.ナタリズマブ関連PMLは造影増強効果を呈する頻度がAIDSなどに伴うPMLより高く,症候性の病変はほぼ常に拡散強調像で高信号を示す89.抗JCウイルス抗体陽性患者やナタリズマブによる治療期間が2年を越える患者ではPMLの発症リスクが上昇すると報告されており,年3~4回のMRIでのフォローが多発性硬化症・視神経脊髄炎診療ガイドライン2017で推奨されている.フィンゴリモドを投与されている患者においてもPMLの発症の危険性が高まるため3~6ヶ月に一度のMRI検査が推奨されている.一方,ナタリズマブ関連PMLが発症した場合に治療を行うと,細胞性免疫が増強されて免疫再構築炎症反応症候群(immune reconstitution inflammatory syndrome,以下IRISと略記)を高率に発症する.ナタリズマブ関連PML-IRISの画像所見としては増大傾向の強い浮腫やmass effectがみられ,T1強調像で病変の辺縁が高信号を呈し,高率に造影増強効果を示す10

3. NMOSDの画像診断

(1) NMOSDの診断基準

従来の視神経脊髄炎(neuromyelitis optica,以下NMOと略記)は視神経炎と脊髄炎を主徴とする炎症性脱髄疾患とされ,典型的な症状を呈するNMOと抗aquaporin-4(AQP4)抗体が陽性で典型的な症状の一部のみを呈するNMOSDに分類されていた.2015年のInternational Panel for NMO Diagnosis(IPND)では抗AQP4抗体という特異な免疫病態をもつ疾患群を包括する概念として新たな診断基準が提唱された11.診断基準の改変にともない,これまでのNMOとNMOSDを統合してNMOSDと総称されることとなった.

NMOSDの最新の診断基準である2015 IPND Criteriaでは抗AQP4抗体の有無及び六つの主要臨床症候とMRI所見に基づき診断を行う.NMOSDの診断基準の要点をTable 5に示‍す.

Table 5  NMOSD diagnostic criteria for adult patients.
抗AQP4抗体陽性の場合の診断基準 抗AQP4抗体陰性(あるいは未測定)の場合の診断基準
1.血清抗AQP4抗体陽性 1.視神経炎,急性脊髄炎,あるいは延髄最後野症状がある
2.空間的多発がある
3.以下のMRI所見がある
 a)視神経炎:長い視神経病変や視交叉病変(脳には異常なしか非特異的白質病変)
 b)急性脊髄炎:3椎体以上におよぶ脊髄病変あるいは脊髄萎縮
 c)延髄最後野病変・脳幹病変:延髄背側あるいは最後野の病変,脳幹の上衣周囲の病変
少なくとも一つ以上の主要臨床症候 少なくとも二つ以上の主要臨床症候
1.視神経炎 1.視神経炎
2.急性脊髄炎 2.急性脊髄炎
3.延髄最後野症状 3.延髄最後野症状
4.急性脳幹症状 4.急性脳幹症状
5.MRI病変を伴う症候性ナルコレプシーあるいは間脳症候群 5.MRI病変を伴う症候性ナルコレプシーあるいは間脳症候群
6.MRI病変を伴う症候性大脳病変 6.MRI病変を伴う症候性大脳病変

ただし,抗AQP4抗体の有無にかかわらず他疾患を除外する必要がある.

NMOSD, neuromyelitis optica spectrum disorder; AQP4, aquaporin-4; MRI, magnetic resonance imaging.

(2) NMOSDの画像所見

1)脳病変:AQP4の分布の多い第三,第四脳室や中脳水道周囲,頸髄に及ぶ延髄背側(最後野)病変が特徴とされる(Fig. 2A).他に非特異的白質病変の増加や皮質脊髄路の病変などが特徴的所見として報告されている1213

Fig. 2 Neuromyelitis optica spectrum disorder (NMOSD).

A. Area postrema lesion at the medulla oblongata, B. Spinal cord lesion that spans over 3 or more contiguous vertebral segments, C. Bright spotty lesions (arrow).

2)脊髄病変:病変は矢状断面で頭尾方向に3椎体以上に及ぶことが多く,水平断面では中心管周囲の灰白質が高頻度に障害される(Fig. 2B).脊髄の腫大を呈するが,慢性期にはしばしば萎縮をきたす.T2強調像で脊髄内にbright spotty lesionsと呼ばれる脳脊髄液と同程度の高信号域を呈することがある(Fig. 2C).また,脊髄病変は頸椎レベルに比べて胸椎レベルでの頻度が高く,胸椎レベルの病変の方が頭尾方向に長いとされる12

3)視神経病変:両側性で視神経の1/2以上に及び,ときに視交叉や視索にまで及ぶことがある.視神経の腫大,T2強調像やSTIR像で高信号,造影増強効果を呈する.慢性期には視神経が萎縮することがある.

(3) 鑑別診断における注意点

NMOSDはSjögren症候群,全身性エリテマトーデス,橋本甲状腺炎,重症筋無力症などの自己免疫疾患やposterior reversible encephalopathy syndrome(PRES)を合併することが多い.近年,オリゴデンドロサイトの細胞膜表面に発現する糖蛋白質であるMOGに対する抗体が発見され,このMOGに対する抗体が発症に関与するMOG抗体関連疾患が抗AQP4抗体陰性のNMOSDの21~42%に含まれていたと報告されている1

4. MOG抗体関連疾患

(1) MOG抗体関連疾患の疾患概念

近年,抗MOG抗体の発見及び検出感度上昇に伴い,抗MOG抗体が陽性となった脳脊髄炎はMOG抗体関連疾患やMOG抗体関連脳脊髄炎と称され,MSやNMOSDとは病理像が異なった新たな疾患概念として捉えられている1415.脱髄をきたした成人症例の1.2~6.5%がMOG抗体関連疾患とされており,小児の脱髄症例ではより高頻度(約40%)にみられる.抗AQP4抗体陰性でNMOSDと診断されていた症例や後述するADEMなどとのオーバーラップも多いと考えられている.

(2) MOG抗体関連疾患の画像所見15

1)脳病変:橋や視床にADEMと似た境界不明瞭な病変がみられることが多く,中小脳脚に及ぶことがある.小児では両側性で大きな深部白質病変が多発する傾向にある.大脳皮質や髄軟膜に病変を認めることがあり,皮質の腫脹や周囲白質の浮腫性変化,髄軟膜の造影増強効果を示す(Fig. 3A, B).病変は1ヶ月以内の短期間で劇的に改善することがある.

Fig. 3 MOG antibody-associatedd disease.

A. Lesions extending from the cortex to subcortex, B. Contrast enhancement along the pia arachnoid membrane (arrow), C. Swelling and STIR hyperintensity of the optic nerve (arrow).

2)脊髄病変:頸髄から腰髄いずれにも生じ,抗AQP4陽性のNMOSDと同様に大部分は脊髄の中心部で長軸方向に長い(3椎体を越える)病変を呈するが,辺縁部に存在し頭尾方向に短い脊髄病変が生じることもある.NMOSDやMSと比べて脊髄円錐や神経根病変の頻度が高いとされている.

3)視神経病変:半数は両側性で範囲が長く,特に眼窩内など前方部で見られることが特徴的である.急性期には視神経や視神経鞘の浮腫や造影増強効果を呈し,周囲の脂肪織への炎症の波及を伴う場合もある(Fig. 3C).

5. ADEM

(1) ADEMの診断

主に麻疹や水痘,風疹などの発疹性ウイルス感染後やワクチン接種1~3週間後に急性の経過で発症し,単相性の経過で中枢神経系に散在性の炎症・脱髄をきたす.ただし,特発性の症例や先行感染の有無がはっきりしない症例があるため,International Pediatrics MS Study Groupが策定したADEMの診断基準では先行感染や予防接種の有無は診断に必須とはされていない16

(2) ADEMの画像所見

脳MRIでは,皮質下白質や基底核,視床に好発し,2 cm以上の比較的大きいT2高信号病変を呈することが多く,病巣が多発性,非対称性に分布することが特徴とされる(Fig. 4).MSと異なり脳室周囲白質の病変やT1-black holeをきたす病変は少ないとされる17.結節状やリング状の造影増強効果を示すが,増強効果を示さないことも多い.

Fig. 4 Acute disseminated encephalomyelitis (ADEM).

Multiple lesions extending from the subcortex to the deep white matter (arrows).

(3) 画像診断における注意点

ADEMでは画像所見が臨床経過に遅れて出現することが多く,急性期のMRIで異常所見が見られないからといってADEMを否定する根拠とはならない.また,臨床症状が改善した後に画像所見の増悪がみられた場合に,病状の再増悪と間違えないように注意する必要がある.ADEMの約2%では出血を合併した急性出血性白質脳症(acute hemorrhagic leukoencephalopathy,以下AHLEと略記)をきたすことがあり,死亡例は70%と高く,回復例の多くで後遺症を伴うとされる.COVID-19感染に伴ってADEMやAHLEを発症することもある18

おわりに

中枢神経の炎症性脱髄疾患の画像所見と最近の知見について述べた.MRIは脱髄疾患の診断だけでなく,イメージングバイオマーカーや治療薬による副作用のモニタリングとしても重要な役割を担っており,画像診断や治療法の発展に伴いこれからも新たな知見が増えることが予想される.

Notes

※著者全員に本論文に関連し,開示すべきCOI状態にある企業,組織,団体はいずれも有りません.

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