抄録
【トレーニング現場へのアイデア】空気圧負荷装置を用いて体重比による負荷設定で行った下
肢筋パワー測定は、従来の等速性筋力測定やフリーウエイトの測定とは異なる評価法として有
用である可能性が示された。そのため、安全性が高くトレーニングに活用される空気圧負荷装
置を活用して筋パワーを適切に評価することで、効果的なトレーニングにつながる可能性があ
る。
【目的】下肢筋パワーは多くのスポーツ競技において重要であり、CybexやBiodexなどの「等速
性筋力測定器」や加速度計を用いたフリーウエイトでの測定が行われている。しかし「等速性
筋力測定器」による測定は単関節運動で、競技動作を反映しないなどの課題があり、フリーウ
エイトでの測定は、体重比による複数の負荷量での下肢筋パワーの比較で有意差が認められず、
異なる負荷での下肢筋パワーの評価やトレーニングを行う際の指標として有用でない可能性が
ある。安全に下肢筋パワー値を測定できる器具として空気圧負荷装置があるが、研究は少ない。
そこで本研究では、空気圧負荷装置を用いてスクワット動作を行い、複数の体重比負荷での下
肢筋パワー値の違いを明らかにすることを目的とした。【方法】対象は男子大学サッカー選手
25名(年齢:19.4±1.3 歳、身長:173.3±5.9 cm、体重:69.4±6.2 kg、体脂肪率:14.2±
3.5 %、競技歴:13.4±1.8 年)とした。下肢筋パワーの測定課題動作はスクワットとし、空
気圧負荷装置(Keiser Air 300 squat machine:Keiser社製)を用いて、5段階の体重比(50%、
75%、100%、125%、150%)による負荷量で測定した。各負荷3試行ずつ行い、試行間の休息時間
は1分とした。各負荷間の休息時間は3分とした。各負荷の最高値を解析に採用した。統計処理
は、得られたデータについてShapiro-Wilk検定を用いて正規性を確認した。負荷量間の下肢
筋パワーの比較には、正規性が認められなかったためFriedman検定を行った。多重比較には
Bonferroni法を用いた。有意水準は5%とした。【結果】各負荷量における下肢筋パワーの値は
(50%BW(BW:body weight):578.7±97.2 W、75%BW:822.7±141.6 W、100%BW:984.4±159.6 W、
125%BW:1199±193.9 W、150%BW:1374.3±203.7 W)であった。全ての負荷量間で有意差が認
められた(p<0.05)。【考察】先行研究において、フリーウエイトで行った下肢筋パワー測定で
は体重比負荷量間で有意差が認められなかったが、空気圧負荷装置を用いた本研究では異なる
結果となった。そのため、下肢筋パワー測定に空気圧負荷装置を用いることは、従来とは異な
る評価法として有用である可能性があり、またトレーニングへの活用が期待される。