抄録
本研究の目的は,成熟期の企業のリスクテイキングと企業業績の関係に加えて,リスクテイキングと多角化及び事業撤退の関係を明らかにすることである。リスクテイキングの指標は,先行研究で最も利用されているEBITDA/TA の標準偏差とした。なお,リスクテイキングと企業業績との間にはタイムラグを考慮した。また事業多角化の指標は,エントロピー指数及びハーフィンダール指数を利用し,地域多角化の指標は,海外売上高比率を利用した。さらに,事業撤退に関する指標は,事業・組織再編関連の損益を用いた。定量分析の結果,成熟期の企業においては,リスクテイキングと企業業績との関係で,1年から5年のタイムラグを考慮しても全て正の影響があること示唆した。さらに,事業多角化ではなく事業撤退等による事業の専業化が望ましく,地域多角化はより進展させることが望ましいことが示唆された。