近刊の英文拙稿は、イギリス西部エクセタ市の縮絨工ギルドの産業革命前の変質過程をその内部資料で描いたものである。このギルドでは、17世紀半ばに独占的営業権が失われていく一方、加入者が増加していった。この一見奇妙な状況の背後にあるメカニズムを、拙稿ではそれに先立つ二つの論争との関連で読み解く。
第一に、イギリスのギルドはいつ崩壊したのかという問はわが国でも古典的なものであった。 イギリスでは90年代以降現実政治的背景もあり職業訓練機関としてのギルドが残存したという主張がなされこれをめぐる論争があった。第二に、なぜイギリスは大陸と異なり産業革命期以降急成長したのかというやはり古典的な問をめぐって、その基礎に家族構造の相違をみる主張とギルドなどの相違を見る主張との対立が、21世紀に入り続いている。
拙稿では、エクセタにおける職業訓練機関としてのギルドの存続とそれに先立つギルドと家族の大陸との分岐を論じている。