サイトメトリーリサーチ
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実験手技
フローサイトメトリーによるマウス間葉系幹細胞分離法
吉川 倫太郎小松 貴義宮内 裕美陶山 隆史宮本 憲一松崎 有未
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2017 年 27 巻 1 号 p. 41-45

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抄録

間葉系幹細胞 (Mesenchymal stem cells:MSCs) は,非血球系でプラスチックへの接着性があり,自己複製能と脂肪・骨・軟骨への分化能を有する細胞であると定義されている。MSCsは適切な培養条件に置くことで筋細胞・神経様細胞・肝細胞など,間質以外の細胞に分化することも報告されているため,これらの組織の難治性疾患に対する細胞移植療法のための細胞供給源として期待されている。さらに近年ではMSCsに免疫抑制能があることが示され,さまざまな免疫疾患に対する治療法への応用が検討されている。すでに2015年より本邦でヒトMSCsが急性移植片対宿主病を適応症として製造販売されている。

MSCsはin vitroで容易に培養可能であることから,通常骨髄細胞を培養皿上で培養後に付着増殖した細胞を回収する方法で分離されている。しかしこの方法で分離された細胞集団には,MSCs以外に前駆細胞・脂肪細胞・マクロファージ・内皮細胞等が混入する可能性がある。また,数週間の培養期間を要するため,分化能や遊走能の喪失および細胞老化などMSCs自体の性質変化を引き起こすという問題点を抱えていた。

このような問題を解決するために,われわれは骨髄から直接マウスMSCsを分離できるような特異的細胞表面マーカーの同定を試みた。その結果,マウスMSCsはPDGFR−α(platelet-derived growth factor receptor-alpha)とSca−1(stem cell antigen−1)の共陽性分画に含まれることを明らかにした。このMSCs特異的細胞表面マーカーを指標としたフローサイトメトリーによるMSCs分離法を用いることで,培養条件や他の細胞の影響のない均一なMSCsを得ることが可能となった。この方法は,これまで困難であったMSCsの生体内分布や生理機能の解析を可能にするものとして期待される。

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