抄録
1.S-1投与後の代謝物の同定については,FTに関しては既に明らかにされている以外の新規な代謝物は認められなかった.CDHPについては硫酸抱合体が同定された.OxoについてはCAが代謝物として認められた.
2.S-1投与後のCDHPは投与後1hrの血漿中総放射能の84.3%が未変化体であり,硫酸抱合体は検出されなかった.腫瘍,肝,腎および消化管組織(胃,小腸,大腸)ではいずれの組織においてもほとんどがCDHP未変化体として存在し,硫酸抱合体はわずかしか検出されなかった.
S-1投与後のOxoは投与後1および6hrにおいて,血漿中総放射能の10.9%および2.3%が未変化体で存在し,79.0%および46.9%はCAで占められた.組織中代謝物組成については,腫瘍内では未変化体は検出されず,肝,腎においても血漿と比べて低い割合であった.一方,消化管組織において,放射能は投与初期では消化管上部に存在し,時間とともに下部に移行した.
3.S-1投与後のFTについてはDH-FT,3′-OH-FT,4′-OH-FT,5-FU,FUR,FUdR,FUPA,F-β-alanine,F-nucleotideが確認され,排泄量の多かった主代謝物はF-β-alanine,5-FUであった.CDHPについては,投与後0~24hrで尿中総放射能の73.61%がCDHP未変化体であり,硫酸抱合体は8.95%であった.Oxoについては,投与後0~24hrに排泄された尿中総放射能の9.92%がOxo未変化体であり,CAは31.45%であった.糞中には,投与後0~24hrで投与放射能の51.31%が排泄され,糞中総放射能の21.13%がOxo未変化体であり,CAは50.22%であった.
4.In vitro試験の結果,FTは肝組織ホモジネートのみに明らかな代謝が認められ,F-β-alanineが経時的に増加した.CDHPは肝臓,小腸,腫瘍,血漿いずれの臓器においてもほとんど代謝を受けず,尿中に認められた硫酸抱合体は生成されなかった.Oxoは腫瘍および肝ホモジネート中で15minのインキュベートで消失し,HPLCで保持されない代謝物ピークが観察され,血漿および小腸においてほとんど代謝を受けなかった.またOxoは盲腸内容物により代謝を受けCAが生成したが,これは腸内細菌の関与によるものと考えられた.