薬物動態
Print ISSN : 0916-1139
新規利尿薬M17055の生体内動態(第2報):[14C]M17055単回静脈内投与時のラットにおける分布,胎児移行および乳汁移行
中嶌 裕之中西 猛那波 弘康井田 圭一大澤 伸雄
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2001 年 16 巻 4 号 p. 314-324

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抄録

[14C]M17055を雌雄のラット,妊娠ラットおよび哺乳ラットに0.3mg/kgの用量で単回静脈内投与し,放射能の分布,胎児移行および乳汁移行について検討した.
1.雄性ラットに静脈内投与した時の組織内放射能濃度は,大部分の組識で投与後5分に最高値を示し,腎臓および肝臓に高濃度に移行したが,その他の組識では血漿中濃度より低値であった.また放射能の消失は速やかであり,投与後168時間にはほとんどの組識で定量限界未満となった.
2.雌性ラットに静脈内投与した時の組織への分布は,腎臓への移行が雄性ラットに比して高かったが,その他はおおむね雄と同様の分布パターンを示し,雌雄差は少なかった.
3.妊娠12日目および19日目のラットに静脈内投与した時の胎児への放射能の移行はわずかであったが,妊娠19日目のラットにおいて胎児からの放射能の消失が緩徐であった.また,胎児の消化管およびその内容物中放射能の一時的な上昇が認められたが,出産後の乳児では放射能は速やかに消失した.母獣の組識における分布パターンは非妊娠の雌性ラットと同様であり,雌性ラットの組織への移行性に対する妊娠の影響は少ないものと考えられた.
4.哺乳ラットに静脈内投与した時の乳汁中放射能濃度は投与後2時間で最高値63ng eq./mLを示し,投与後2~12時間では血漿中濃度を上回ったが,投与後12時間以降は速やかに低下し,投与後48時間では血漿中濃度より低値となった.

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