薬物動態
Print ISSN : 0916-1139
新規ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬NB-818の体内動態(第1報):ラットにおける吸収・分布・代謝および排泄
白鳥 建二原 健一高山 文夫斉藤 郁大多和 昌克
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1991 年 6 巻 3 号 p. 309-330

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抄録

14C-NB-818をラットに単回経口あるいは静脈内投与し,吸収,分布,代謝および排泄について検討した.
1.雄性ラットに14C-NB-818を10mg/kg経口投与後,血漿中放射能濃度は投与後1.25hrに最高濃度5.9μg eq./mlに達し,消失半減期12.0hrで血中より消失した.雌性ラットでは投与後3.5hrに最高濃度(11.8μg eq./ml)に達し,消失半減期4.7hrで減少した.一方,雄性ラットに0.3mg/kg静脈内投与したときの濃度は,投与直後より徐々に上昇し,0.5~1hrに最高濃度に達し,以後,消失半減期13.5hrで血中より消失した.雌性ラットでは,雄性ラットと同様の血漿中濃度推移を示し,半減期6.Ohrで血中より消失した.
2.雄性ラットに10mg/kg経口投与後の血漿中未変化体濃度は,投与後30分に最高濃度(587ng/ml)に達し,半減期2.8hrで血中より消失した.経口投与時のbioavailabilityは33%であった.一方,雌性ラットでは,投与後1hrに最高濃度(906ng/ml)を示し,半減期2.2hrで消失した.
3.雄性ラットに10mg/kg経口投与したとき,投与後72時間までの尿中には投与量の8.0%,糞中には84.0%の放射能が排泄され,静脈内投与したときには投与後72時間までの尿および糞中に,おのおの投与量の11.0%,88.3%が排泄された.経口投与後48時間までの胆汁中放射能排泄率は52.4%であり,胆汁中放射能の約28%が再吸収され,腸肝循環が認められた.一方,雌性ラットでは,経口投与後72時間までに尿中には投与量の27.5%,糞中には65.1%の放射能が排泄された.胆汁中には投与後48時間までに投与量の56.5%が排泄された.ラットにおける主排泄経路は胆汁を介した糞中排泄であった.
4,雄性ラットに10mg/kg経口投与後,大部分の組織は投与後0.5~1hrに最高濃:度を示し,肝および消化管に高い放射能濃度が認められた.その後,大部分の組織は血漿中濃度とほぼ同様な推移で減少し,投与後96時間では放射能はほぼ消失した.
5.In vitroでの血清蛋白結合率は,雌雄ラットとも98%以上と非常に高かった.In vivoでは経口投与後30分から24時間まで90%以上であった.また,血球移行率は経口投与後30分から24時間まで9~19%であった.
6.雌雄ラットに経口投与後,両者とも血漿中にはM-2が最も多く認められ,次いでM-10であり,雌性ラットの方が雄性ラットより高かった.尿中においてもM-2が最も多く認められ,尿中排泄量に対する割合は雌性ラットの方が雄性ラットに比べ顕著に高かった.胆汁中では最も多く排泄されたのはM-8であった.尿および胆汁中には未変化体はほとんど検出されなかった.NB-818はジヒドロピリジン環のピリジン体への酸化,エステル部の加水分解,6位のメチル基の酸化およびイソプロピル基の酸化などを経て,生体内においてほぼ完全に代謝を受けることが明らかとなった.
7.以上の結果,NB-818はラットの体内動態に性差が認められ,この性差は代謝物の生成量の差異によることが明らかとなった.

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