薬物動態
Print ISSN : 0916-1139
Suplatast tosilate(IPD-1151T)の体内動態(第2報):Suplatast tosilate代謝物の同定と14C-Suplatast tosilateのラットでの代謝
増田 啓年桑田 慶三松島 英司山脇 一郎新藤 恭司
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1992 年 7 巻 4 号 p. 423-439

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抄録

ラットにIPD-1151Tを経口投与し,血漿中,尿中および胆汁中の代謝物を検索した.また,ラットに14C-標識体を経口投与し,代謝を検討した.
1.IPD-1151Tを経口投与後の血漿,尿および胆汁から代謝物を検索した結果,以下に示す代謝物が同定された.;(±)-4-(3-ethoxy-2-hydroxypropoxy)acrylanilide(M-1), (±)-4-(3-ethoxy-2-hydroxypropoxy)acetoanilide (M-2),(±)-4-(3-ethoxy-2-hydroxypropoxy)propionanilide glutathione conjugate (M-1-GSH), (±)-4-(3-ethoxy-2 hydroxypropoxy)propionanilide cysteinylglycine conjugate (M-1-Cys•Gly), (±)-4-(3-ethoxy-2-hydroxypropoxy)propionanilide cysteine conjugate (M-1-Cys), (±)-4-(3-ethoxy-2-hydroxypropoxy)propionanilide mercapturic acid conjugate(M-1-Ac•Cys), (±)-4-(3-ethoxy-2-hydroxypropoxy)propionanilide mercapturic acid S-oxide conjugate [M-1-Ac•Cys(S→O)], (±)-4-(3-ethoxy-2-hydroxypropoxy)-[3-(methylsulfinyl)propion]anilide[M-1-CH3SH(S→O)]
2.14C-標識体を経口投与1時間後の血漿中は,IPD-1151T塩基が多かったが消失は速かった.M-1は投与後2時間で最高血漿中濃度を示した後,緩やかに消失した.そのほか,いくつかの代謝物が認められた.また,血漿中放射能に対する未同定代謝物の割合は時間の経過とともに増加した.
3.14C-標識体を経口投与後の尿中には放射能が約24%,糞中には約43%が排泄された.糞中の放射能はほとんどIPD-1151T塩基が占めていた.尿中へのIPD-1151T塩基の排泄率は約4%であった.そのほか,M-1-Ac•CysおよびM-1-CH3SH(S→O)が多く排泄されていた.尿中放射能に対する同定代謝物の割合は約29%であった.
4.14C-標識体を胆管カニューレを施したラットに経口投与後の胆汁中には放射能は約14%,尿中には約24%排泄されていた.胆汁中の主代謝物はM-1-GSH,M-1-Cys•GlyおよびM-1-Cysを合わせた画分であった.次いでM-1-Ac•Cysであった.尿中には,排泄された放射能の約半分がIPD-1151T塩基で占められていた.M-1-CH3SH(S%rarr;O)の量は自然排泄尿の排泄量の13%しかなく,腸内細菌が代謝に関与していることが示唆された.胆汁中放射能の約52%,同時に採取した尿中放射能の約11%を同定代謝物が占めていた.
5.経ロ投与されたIPD-1151Tは,一部M-1へ代謝された後,M-1は主にグルタチオン抱合を介して,M-1-Cys,M-1-Ac•Cys,M-1-CH3SH(S→O)へと腸肝循環を繰り返しながら代謝され,尿中に排泄されるものと推察された.

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