薬物動態
Print ISSN : 0916-1139
新規睡眠物質N3-Benzylthymidineの睡眠作用と体内動態
古田 悦子木村 敏行越上 誠久世 治朗渡辺 和人山本 郁男
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1992 年 7 巻 5 号 p. 577-590

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抄録
マウスを用いて,合成したN3-ByTdおよび関連化合物の単独睡眠作用,[3H]N3-ByTdを尾静脈および経口投与したときの生体内分布・代謝および排泄について検討し,以下の結果を得た.
1.N3-ByTd,N3-ByUd,N3-o-XyTd,N3-m-XyTd,N3-p-XyTd,3',5'-Di-O-Me-N3-ByTd,3',5'-Di-O-Me-N3-o-XyTdをi.c.v.投与した場合,単独睡眠作用を示し,N3-ByTdが最強の睡眠作用を示した.さらに,N3-ByTdはp.o.,i.v.およびi.p.投与でも中枢抑制作用が確認された.
2.[3H]N3-LByTdを投与した場合の組織分布は,静脈内投与で投与1時間以内にピークとなった.また,静脈内,経口投与共にg組織あたりのnmol[3H]N3-ByTd相当量では肝臓,腎臓中に比較的多かった.
3.[3H]N3-ByTdの尿および糞中への排泄は,静脈内投与で投与量のおのおの46.1%,5.1%,経口投与では投与量のおのおの54.5%,7.1%が排泄され,これらの大半は,投与12時間までに排泄された.したがって,N3-ByTdは静脈内,経口投与共に主として尿中へ排泄されることが判明した.
4.尿中代謝物の検索から,N3-ByTdは静脈内,経口投与共に主として未変化体として排泄されることが明らかとなった.また一部,糖,ベンジル基の離脱したN3-ByT,Td,さらにTへと代謝されることが判明した.加えて,開環体であるアミノ酸誘導体の生成が示唆された.
5.肝臓中代謝物は静脈内,経口いずれの投与方法においても未変化体であるN3-ByTdが最も多く,次に糖の離脱したN3-ByTが多かった.
6.静脈内,経口投与どちらの投与方法によってもN3-ByTdは量的に少ないものの脳内へ移行しており,主に未変化体および糖の離脱したN3-ByTとして同程度存在することが明らかとなった.N3-ByTは睡眠作用がないことより,作用本体はN3-ByTd自体であると考えられる.
7.核酸へのN3-ByTdおよび代謝物の取り込みは,少なくともこの実験条件下では認められなかった.
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© 日本薬物動態学会
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