薬物動態
Print ISSN : 0916-1139
Simvastatinのラット血漿,肝および小腸ミクロソームにおける加水分解酵素
今井 直子大多和 昌克
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1992 年 7 巻 5 号 p. 599-608

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抄録
雄性Sprague-Dawly系ラットの血漿,肝臓および小腸ミクロソームを用いて,simvastatin(SV)からそのオープンアシッド体(SVA)への加水分解酵素の性質について比較した.
1.SVはpH3~6の範囲では,37°C,30分間のインキュベーションによっても非酵素的加水分解をほとんど受けなかったが,pH8以上でぱ速やかに加水分解された.
2.血漿,肝および小腸ミクロソームの加水分解酵素活性に及ぼすpHの影響を調べた結果,血漿,肝および小腸ミクロソームでの至適pHは7~8付近であった.
3.各組織でのpH7.2におけるVmax値は,血漿で0.33nmol/min/mg proteinであり,肝臓および小腸ではそれぞれ0.97および0.24nmol/min/mg proteinであった.Km値は,血漿,肝臓および小腸でそれぞれ21.9,203.3および567.6μMであった.Vmax/Km値を各組織間で比較すると血漿が最高値を示し,肝の3.2倍,小腸の38倍であった.
4.各種のエステラーゼ阻害剤を用いて,SVからSVAへの加水分解反応に及ぼす影響を調べた.血漿では,diisopropyl fluorophosphate(DFP)の添加によりその加水分解反応はほぼ完全に阻害され,bis(p-nitrophenyl)phosphate(BNPP)では用量依存的に阻害された.また,physostigmine(Phys)では,高濃度の添加によってのみ阻害された.肝臓では,DFPおよびBNPPにより用量依存的に阻害されたが,Physでは何ら影響を受けなかった.一方,小腸では,DFP,BNPPおよびPhysのいずれによっても加水分解反応は阻害されなかった.また,EDTAの添加により,肝臓および小腸での加水分解反応は用量依存的に阻害されたが,血漿では何ら影響を受けなかった.血漿中のSV加水分解酵素は,その活性中心にセリン残基をもつある種のカルボキシルエステラーゼの可能性が示唆された.肝ミクロソームでのSVの加水分解反応にもカルボキシノレエステラーゼの関与が示唆されたが,血漿中酵素とは性質が異なると思われた.一方,小腸ミクロソームでの加水分解反応は,血漿および肝ミクロソームとはまったく性質の異なる加水分解酵素の関与が示唆された.
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© 日本薬物動態学会
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