薬物動態
Print ISSN : 0916-1139
(S)-(+)-6-(2-chlorophenyl)-3-cyclopropanecarbonyl-8,11-dimethyl-2,3,4,5-tetrahydro-8H-pyrido[4',3':4,5]thieno[3,2-f][1,2,4]triazolo[4,3-a][1,4]diazepine (E6123)の体内動態(第1報): 単回投与時のイヌにおける吸収,分布,代謝,排泄および代謝物の構造決定
草野 一富田中 茂古崎 輝也宮澤 修平但野 恭一杠 輝昭
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1993 年 8 巻 2 号 p. 221-237

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抄録

14C-E6123をビーグル犬に経口投与した際の吸収,分布,代謝,排泄および代謝物の同定について検討し,以下の結果を得た.
1.全血,血漿および血球中放射能は,投与後それぞれ2.3,3.0,2.0時間に最高放射能濃度(全血:237.2,血漿;230.0,血球;268.5ng eq./ml)に達し,以後二相性を示して減少した.このときのt1/2λ1およびt1/2は,それぞれ全血で6.3時間および33.9時間,血漿で4.9時間および38.7時間,血球で3.0時間および18.7時間であった.また,AUCは全血,血漿,血球でそれぞれ3952,3745,4167ng eq.·h/mlであった.
2.血漿中未変化体は,投与後1.3時間で最高濃度(88.7ng/ml)に達し,以後t1/2が1.7時間で速やかに減少した.このときのAUCは330ng·h/mlであった.
3.ビーグル犬における14C-E6123のin vitroタンパク結合率は,10~1000ng/mlの範囲でほぼ一定で,57~59%であった.また,ビーグル犬に14C-E6123を投与した後のin vivoタンパク結合率は,投与後0.75時間で約59%で,投与後8時間では約85%となった.
4.経口投与後の大部分の臓器・組織中放射能濃度が,血漿中放射能濃度と同程度かそれ以上であったことより,組織移行性は高いものと考えられた.放射能の臓器・組織からの消失は,眼の一部の組織を除いて速やかであった.
5.投与後2時間の放射能濃度は,標的臓器である肺中において血漿中の1.8倍高かった.また,このときの血漿および肺中の放射能の存在形態はほぼ同じで,未変化体が最も多く存在した.6.尿および糞中への放射能の排泄率は,投与後48時間までに投与放射能量のそれぞれ約42%および47%と排泄は速やかであった.このときの尿および糞中にはそれぞれ少なくとも7種類の代謝物が認められ,未変化体は少なく,尿中にはM3が,糞中にはM2およびM4が主に認められた.
7.ビーグル犬におけるE6123の主代謝経路は,(1)11位のメチル基の水酸化(MIB),(2)2位の炭素の水酸化,(3)側鎖の加水分解(M3)であると考えられた。また,2位の炭素が水酸化された後,互変異性体としてM1Aが生成し,さらに還元および酸化をうけてそれぞれM2およびM4に代謝されていると考えられた.

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