抄録
北海道羅臼漁港の深層水取水施設では,採水時のストレーナー濾過により動物プランクトンを主とする粒子の除去が行われている.本研究は2007‒2008, 2008‒2009, 2022‒2023年の3年間にわたり濾過捕集した動物プランクトン試料を解析し,①動物プランクトン群集の経年変化,②優占種Metridia okhotensisの生活史,の2点を明らかにしたものである.動物プランクトン量は,20072009年に比べて2022‒2023年の方が少なかった.また動物プランクトン分類群組成とカイアシ類の種組成において,2番目以降に多かった分類群や種は2007‒2009年と2022‒2023年の間で異なっていた.優占種M. okhotensisの個体群構造,雌雄比および雌成体の生殖腺成熟には,各年に共通する明確な季節変化があり,南部オホーツク海における海洋生態系の重要な構成種である本種の生活史の一端が明らかになった.