Online Journal of JSPEN
Online ISSN : 2434-4966
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2025 Volume 7 Issue 2 Pages 109-110

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 研修概要

1. 研修施設名

札幌医科大学附属病院

2. 研修期間

2024年11月25日~11月29日

 報告

当院では,2023年よりNutrition Support Team(以下,NSTと略)カンファレンスの充実やNSTラウンドの時間短縮を目的にラウンド方法や記録フォーマットを変更したのですが,十分な効果が得られておらず,2025年度から再開予定の臨床実地研修のカリキュラム内容を検討中でもあることから,NST活動に活かせるのではないかと思い応募しました.現在Intensive Care Unit(以下,ICUと略)で勤務しており,他院での集中治療患者の栄養管理方法の実際を学び,自部署での栄養管理に繋げたいと思い,急性期に特化した札幌医科大学附属病院に申請しました.

同院で集中治療領域でのプロトコールを含めた栄養管理方法,多職種間連携,早期栄養介入管理加算の取得率上昇の工夫,NSTラウンドやカンファレンスの実際などについて学び,自施設でのNST活動の活性化,臨床実地研修のカリキュラム内容の検討,自部署での栄養管理に活かすことを目的といたしました.

事前の打ち合わせの際,上記の研修希望内容をお伝えし,NST活動の実際とICU,Emergency Intensive Care Unit(以下,EICUと略)・High Care Unit(以下,HCUと略)での研修を取り入れてくださいました.

初日は,オリエンテーション,NST活動の実際,病棟の栄養管理についてでした.まず驚いたことは,食事と栄養補助食品の併用や食事の個別対応などをするためには,NST介入が必要であること,必要な物はコンビニで買ってもらうことでした.当院では,医師の許可の元,看護師が食事調整できるため,一つ一つに対応していたら膨大な件数になり対応しきれないのではないかと思いましたが,付加食をつけるということは,給食費が増えるだけでなく,イレギュラーなオーダーになり,インシデントの元になることを指摘され,今まで調理師の視点で考えたことがなかったことに気付かされました.少しでも食べられるように付加することばかりに目がいってしまい,たくさんの小鉢や栄養剤が配膳されていたり,毎日一緒だと飽きて冷蔵庫に貯まっていたりすることが多く見られます.今まで,コンビニで買ってもらうという発想がなく,給食費が増えることは仕方がないと思っていましたが,コンビニで買ってもらえば,患者自身が選んだ食べたい物であり,食べたくないのに食べさせられているという苦痛は生じにくく,患者にとっても良いことだと感じました.

3日目と5日目はNST回診の実際でした.NSTメンバーでカンファレンス後に病棟スタッフと患者へのラウンドをする方法は当院と一緒でした.それぞれの職種の立場としての意見が活発に飛び交い,多職種であることの強みが存分に感じられるカンファレンスでした.病棟ラウンド時,病棟スタッフへNSTの提案を伝えるだけでなく,提案内容で困ることはないか,もし提案の実践が出来ない場合はどうしたら実践出来るかと一緒に考える姿勢や一緒に頑張りましょうという声かけが印象的でした.情報収集時,経過表に間食と補食を記載する欄があり,食べたものが細かく記載されていたり,自力で体重計に乗れない患者が定期的に体重測定されていたりしたことに驚いたのですが,NSTラウンド後,全員が提案内容を実践され,「みんなで考えてくれて嬉しい」という患者の言葉が記録されており,病棟スタッフや患者に寄り添ったカンファレンスとラウンドを継続的に実践し,病棟スタッフの信頼を得ているからこそ,病棟スタッフの協力が得られ,正確な栄養評価と介入ポイントを見つけられるのだと感じました.

2日目と4日目は,ICU,EICU・HCUの見学でした.クローズドICU管理・当番医制であるため,その日の担当者が統一した治療,栄養管理が行えるように,診察記録テンプレートに栄養についての欄があり,合同カンファレンス時に栄養管理について話し合われていました.それぞれ独自の経腸栄養投与スケジュールや排便コントロール基準などのプロトコールがあり,同じ認識での栄養管理が行われていました.集中治療領域では活動量低下,腸蠕動低下のためまずは便秘,その後抗生剤投与や炎症などのため下痢で困ることが多く,看護師から医師へ排便について報告することが多いですが,医師から排便処置について意見があったり,夜勤帯に配慮された排便コントロール基準に沿い,それぞれの勤務帯で行動するため,下痢や便秘で困ることがあまりないと言われていました.また,NSTに所属している摂食嚥下障害看護認定看護師が定期的に重症患者の栄養療法について講義したり,栄養計算やINBODY測定を行い,採血データや経過日数から予測される栄養指標を提示していました.継続して正しい栄養管理が行えるように,病棟を越えて連携・共有し栄養介入をすることで,多職種で統一された早期栄養管理に繋がっているのだと感じました.

今回の研修を通して,多職種連携での栄養管理について改めて学び,早期から共通認識を持って栄養管理を行うことの大切さを感じました.NSTメンバーだけでなく,病棟スタッフ・患者を含めた協力が不可欠であり,それを実現するための教育,一緒に栄養管理をしているのだという姿勢や声かけが,患者にとって良い栄養管理に繋がっているのだと感じ,今後自施設でのNST活動の活性化,栄養管理に繋げていきたいと思います.

最後になりましたが,ご多忙な中,研修を受け入れてくださった札幌医大附属病院栄養管理室の皆様,NSTに関わる全てのメンバーの皆様,病棟スタッフの皆様,そして研修の機会を頂いたJSPENの皆様に深く感謝申し上げます.

 
© 2025 Japanese Society for Parenteral and Enteral Nutrition Therapy
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