抄録
近年、液晶コロイドの研究が脚光をあびており、それに伴って液晶と液体・気体との界面アンカリングに関する研究が、実験・理論両面で盛んに行われている[1]。液晶中に分散したコロイド粒子の秩序構造は、コロイド表面でのアンカリングと液晶の弾性のバランスで決まるので、光・電場・圧力などの外場でこのバランスを変えることによるコロイド秩序構造の制御は、学術的な興味のみならず応用上の観点からも関心を集めている。一般的にコロイド表面では液晶の配向が強く規制されており、それによって液晶中に誘起される配向歪みが、分散したコロイドの秩序発現の源とされている。一方、界面での分子配向の変化は、結果的に液晶中に配向歪みを誘起するだけではなく、界面張力をも変えるはずである。我々は、これまであまり注目されてこなかった、界面分子配向が表面張力に及ぼす影響を、ネマチック液晶自己保持膜の形状変化観察によって直接調べ、その効果がきわめて大きいことを見出した。