英文学研究 支部統合号
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人文学研究における作業仮説としての<相同性>(特別講演,第60回支部大会,中部英文学)
池上 嘉彦
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2009 年 2 巻 p. 421-435

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抄録
<相同性>とは-芭蕉による見事に日本的な定式化によると、「西行の和歌における、宗祗の連歌における、雪舟の絵における、利休が茶における、その貫通するものは一なり」ということ、西欧圏の定式化では、「異なる分野AとBにおいて、Aにおける項aと項bの関係がBにおける項cと項dの関係に等しい場合、aとb、cとdというそれぞれの組の間には相同性という関係が存在する」ということ-である。もともとは19世紀の生物(解剖)学の用語で、本来同一の器官が異なる機能を担う器官として進化した場合を<相同性>(homology:例えば、陸上動物の肺と水中動物の鰓)、本来別の器官が類似の機能を担う器官として進化した場合を<相似性>(analogy:例えば、鳥の翼と昆虫の羽根)と呼んだもの。生物学的概念に含まれる通時性を因果関係に置きかえてみると、「相同的な構造体は同一の起因に由来する」という作業仮説を立ててみることができる。この仮説を踏まえての検証を通して、人の<こころ>がさまざまな分野を横断していかに統合的に働くかを確認することができるはずである。
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© 2009 一般財団法人 日本英文学会
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