日本内分泌学会雑誌
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ホルモン産生細胞とその腫瘍化の分子機構
岡本 宏
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1984 年 60 巻 12 号 p. 1449-1463

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抄録

ホルモン産生細胞は, ホルモンの遺伝子情報発現を指標として細胞機能を追求できることで, 生化学, 分子生物学の恰好の材料となる。また, ホルモン産生細胞は極めて分化した細胞であることから, 一般に増殖・再生能力が弱く, 従ってホルモン産生細胞は不可逆的に障害を受けやすく, 特異的なホルモン欠損症が発症するということで臨床的にも重要なだけでなく, 細胞の分化と増殖・再生の関係を追求する上に興味ある材料と考えられる。さらに, 時代的, 社会的背景から, 血糖を下げることあるいは血圧を下げること, さらには細胞の癌化ということは現代の我々にとっては特に重要となってきている。このような背景から, 血圧を下げるペプチドとして最近注目されているVasoactive Intestinal Polypeptide (VIP) の生合成過程とその調節機構について, また我々の体内で血糖を下げる唯一の因子であるインスリンの生合成調節機構インスリン産生細胞の変性 (インスリン依存性糖尿病の発症), 腫瘍化, 再生・増殖の機構につき, 最近の我々の研究結果を中心に考察してみたい。

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