日本内分泌学会雑誌
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多嚢胞卵巣症候群-概念の整理と最近の治療
森 崇英
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1987 年 63 巻 12 号 p. 1449-1457

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抄録

多嚢胞卵巣症候群 (PCOS) は, 無排卵症の一型で, 不妊症の重要な原因疾患のひとつであるが, 男性化徴候を伴うことがあるので, 内分泌内科専門医の診療対象になることもある。ところが, 現在この症候群の概念に混乱がある一方で, 最近新しい治療法が各種登場してきている。そこで現時点の知見に基づいた概念の整理を試み, また今日の治療法を紹介したい。
Sclerocystic ovaryという記載はすでに前世紀半ばにあり, Microcystic degenerationという卵巣の形態変化が, 子宮出血あるいは無月経という対照的な月経異常をもたらすことも今世紀初めに知られていた。1915年にShröder7)が子宮出血に着目して卵胞存続に基づくMetropathia hemorrhagicaという概念を確立したが, 無月経については未解決のままであった。
こうした背景の中で1935年にStein&Leventhal8)が, 両側卵巣の多嚢胞性腫大が無月経のほか, 男性化, 肥満, 不妊などの症候を随伴することを指摘し, 症候群としての概念を確立し, 1949年にMeigsがStein-Leventhal症候群と命名した。
その後1960年代に入り, 無月経に卵巣の多嚢胞性腫大さえあればPolycystic Ovary Syndrome (PCOS) あるいはPolycystic Ovarian Disease (PCOD) と呼ばれるようになり, ここで漠然とした概念の拡大があって, 今日の混乱が始まったといえる。1)2)

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