実験動物
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栄養水準の差異がマウスにおける諸臓器の比体重値および骨の相対的な大きさにおよぼす影響
後藤 信男森 彰
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1963 年 12 巻 3 号 p. 130-134

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抄録
本実験は, マウスの各臓器の比体重値と骨の頭蓋長に対する相対的な大きさが, 栄養水準の差異によって影響されるか否かをみるために行なったものである。
供試マウスは, 2近交系dd, rrとそれらの間の正逆交配雑種F1 dr, rdの♂である。これらは, 出生後5日以内にそれぞれ高低2栄養区に2分され, 60日令まで飼育したのちに処分された。結果はつぎのとおりである。
1.各臓器の比体重値は, 低栄養区における値が, 高栄養区におけるそれらよりも大であった。これは, 低栄養区飼料の脂肪, 蛋白質の不足が, 測定した臓器以外の体内の脂肪, 筋肉の増加を抑制し, 分母である体重の成長を抑制したためと考えられる。
比体重値に関して, dd系とrr系との間に系統的差異が認められるが, dd, rrとF1のdr, rdとの間およびdrとrdとの間には差異は認められない。
2.頭蓋を構成する部分の骨の頭蓋長に対する相対的な大きさは, 高低2栄養区の間でほとんど差異が認められなかった。これは, 第1に, これら部分の骨が頭蓋長と同じ頭蓋に属すること, 第2に, 頭蓋の成長は, 成長段階の比較的初期にその大部分を終了するために, そののちの栄養条件の影響をあまり受けないことによるものであろう。
3.これに反し, 頭胴長, 尾長, 大腿骨長, 脛骨長などは, 比較的後期にまで成長しつづける。従って, これらは栄養条件によって頭蓋長より成長を左右されやすい。これらの骨の頭蓋長に対する相対的な大きさが, 高栄養区で低栄養区より大であったのは以上の理由によると思われる。
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© 社団法人日本実験動物学会
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