実験動物
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タイロシントランスアミネース活性のホルモンによる調節とラットの年令, 性, 食餌条件との関係
渡辺 民朗
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1972 年 21 巻 3 号 p. 121-128

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抄録
自然光下で飼育されたラット (ドンリュウ) の肝臓におけるタイロシントランスアミネース (TAT) 活性の日周期変動と, ホルモン, とくにハイドロコーチゾン, グルカゴン, インシュリンの投与に対するTAT活性の応答性の差異について検討した。TAT活性には明らかな日周期性変動が認められ, 日没時の活性上昇は副腎機能が関与している。一方, 夜半時の活性上昇は食餌中の蛋白含量と関係し, 高蛋白食 (60%蛋白含量) では明らかな活性上昇を示し, 高炭水化物食 (12%蛋白含量) では逆に活性の低下が認められた。
つぎに, 日周期変動とホルモン投与による応答性との関連を調べた。ハイドロコーチゾン, またはグルカゴンによるTAT活性の上昇は, 年令的には3週令のラットよりも5週令のラットの方が, 性別では♀よりも♂の方が明らかであった。また, TAT活性値は正午に投与された群よりも日没時に投与された群において著明に上昇した。一方, インシュリンに対するTAT活性の変動は3週令のラットにおいては5週令のラットよりも, また正午に投与された群においては日没時に投与された群よりも明らかな活性の上昇を示した。副腎摘出されたラットも無処理ラットの場合と同様に明らかな日周期性変動を示し, ホルモンに対する応答性は両群ともほぼ同様の傾向にあった。
これらのことから, ホルモンに対するTAT活性の応答は動物の年令, 性, 飼育条件とともに, TAT活性の日周期的変動にも依存していることが明らかである。そこで, 信頼性と再現性のある実験結果を得るためには, 一日のうちの試料採取の時刻についても充分考慮されなければならないと思われる。
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© 社団法人日本実験動物学会
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