抄録
チフス症に均一な高い感受性を示すDKIマウスに, C3H/Heから比較的抵抗性を支配する遺伝子 (R) を導入する実験をこころみて来た。
DKI雌とC3H/He雄とのF1雄からDKI雌に, 各代でRをもつ個体を選抜しながら, 連続戻し交配をくり返し, BC10のRをもつ雌雄の交配によって, Rをホモにもつ雌雄を作出した。これを新しいcongenic resistant系統 (DKIR) のG0とし, G1から兄妹交配と一部はコロニー内交配とをおこなって代を重ねた。そのG7までのマウスに腸炎菌感染実験をおこない, 死亡日数分布と臓器内生菌数とについてDKIおよびC3H/Heと比較した結果, DKIRの抵抗性は安定して維持され, C3H/Heの抵抗性を主に支配する遺伝子Rは, ホモの状態で導入されていることが確かめられた。DKIRの抵抗性と, それが安定して維持されることが確かめられた結果, この実験チフス症におけるcongenie resistant系統は, 遺伝的背景系統である高感受性のDKIと比較することによって, チフス症に対する遺伝的抵抗性の機序追求のための実験動物として用い得ることとなった。