抄録
ヒト胎盤アルカリホスファターゼ (ALP) とラット, イヌ, ネコ, ウサギ, ウシ胎盤ALPの比較生化学的検討を行ない, 次の結果を得た。1) 至適pHはヒトも他の動物の胎盤ALPも同じpH10.2であるが, 一般的に言われる胎盤性ALPの熱安定性はヒトに限られ, 他の動物ではいつれも56℃, 15分で50%以下, 65℃, 15分では, 活性を全く失った。2) ヒト胎盤ALPの熱安定性はEDTA処理を前もって行うことにより, 消失した。3) L-phenylalanineによる阻害もヒトでは70%以上の阻害を受けるのに対し, 他の動物では25%以下の弱い阻害しか受けず, 一般的に言われる胎盤ALPのL-phenylalanineによる阻害はヒト胎盤ALPに限られた。4) 界面活性剤による阻害ではヒトとラットの胎盤が陽イオン性界面活性剤であるCation-208, Cation-FBにより強い阻害を受け, 他の動物胎盤ALPには全く影響を与えなかった。一方, 陰イオン性界面活性剤であるDOC-Naはヒト胎盤ALPには全く影響を与えないが, 他の動物胎盤ALPを強く阻害した。非イオン性界面活性剤 (Triton X100, ADEKATOL) はいづれの胎盤ALPにも作用しなかった。5) 基質特異性ではヒト胎盤ALPだけがβ-glycerophosphateセこ親和性を示した。