抄録
マウスのエーテル麻酔に対する反応をC57BL/6NJcl, BALB/cAJcl, DBA/2NJcl, C3H/HeNJclの4近交系およびJcl: ICR, Slc: ddYの2クローズドコロニーについて比較, 検討した。各系統マウスの4週齢の動物を空気で一定濃度に希釈したエーテルガスに90分間暴露し, その致死反応の系統差を調べた。その結果, 一般にマウス・ラットのMAC (ED50) として知られている3.2%atmでは雄のC57BL/6の死亡率は0%であるのに対し, C3H/Heは80%と高い。また, 4.6%atmにおける死亡率はC57BL/6では0%, ddY, ICRではそれぞれ50%, 82%, DBA/2, BALB/c, C3H/Heの3系統ではすべて死亡した。雌もほぼ同様の傾向を示した。エーテル濃度2.7~9.6%atmを通しての結果からエーテルに対する抵抗性の順位はC57BL/6>ddY=ICR>DBA/2≧BALB/c≧C3H/Heであった。最も抵抗性であるC57BL/6と最も感受性であるC3H/Heの50%致死濃度 (LD50, %atm) は雄ではそれぞれ6.0.3.1, 雌では6.6, 3.2でありC57B: L/6はC3H/Heの約2倍の値を示した。また, 麻酔導入時に, 正向反射の消失を指標として算出した50%有効濃度 (ED5。) にもC57BL/6>C3H/Heの傾向が見い出された。以上の結果から, C57BL/6系はエーテルに対し抵抗性系統であり, C3H/He系は感受: 性系統であることが明らかとなった。