抄録
高濃度塩化ナトリウム溶液を投与されたマウスの行動特性および脳の病理組織学的検査を実施した。stepthrough式shuttle boxを用いた受動的回避反応では高濃度塩化ナトリウム溶液を投与されたマウスの反応潜時は対照マウスのそれよりも短縮していた。two-way式shuttle boxを用いた能動的回避反応, 自発運動量および運動機能検査では異常は認あられなかった。脳の病理組織学的検査では単回投与例と比較し海馬の神経細胞の変性および脱落が高度かつ高頻度に認あられた。海馬病変の程度と受動的回避反応の障害は相関していた。高濃度塩化ナトリウムによって惹起された脳病変は海馬病変に起因するヒトの記憶障害モデルになると考えられた