抄録
ハムスターの精巣局部X線照射後, 精子濃度の変動および体外における精子の受精能について検討し, 次の結果を得た。2Gy照射後の精子濃度の経時的変動は, 照射後第6週まで顕著な低下を認め, その後に対照レベルまで回復する。精子濃度と線量効果の関係は, 低線量域では差が見られないが0.5~3Gyでは直線的に低下する。さらに, 2Gy照射後第6週の精子は, 著しい運動性の低下とともに47.7%の低い体外受精率を示し, 精子の受精能は低下する。これらの結果は, 照射後の精子濃度の経時的変動と一致した。また, 体外受精成績の線量効果は1Gyより高線量になるのに従って精子の運動性は低下し, 精巣と精巣上体尾部の縮小傾向が認められる。これに伴い, 受精率が急激に低下し, 3Gy以上の線量域ではほとんど受精しないことが指摘された。以上より, 体外における精子の受精能におよぼすX線照射の影響は, 主に受精能獲得を含む卵子への侵入能力に障害を来すことが示唆され, その原因は精子濃度の減少および精子運動性に代表される機能低下に関係あるものと推察された。