繊維学会誌
Online ISSN : 1884-2259
Print ISSN : 0037-9875
ポリエチレンテレフタレートの構造と固体物性に関する研究
第3報分子配向と粘弾性異方性との相関性
葭原 法福島 昭夫渡辺 寧中井 明美野村 春治河合 弘廸
著者情報
ジャーナル フリー

1981 年 37 巻 10 号 p. T387-T414

詳細
抄録

ポリエチレンテレフタレートの恒時動的粘弾性の温度依存性データ(-150~200°C)からα, βおよびγ(αI, αII, β, γI, γII, γIII)の各緩和機構を分離する現象論的な方法を,次の3つの仮定の基に誘導した。すなわち, (1)粘弾性関数に対する各緩和機構の寄与の加成性, (2)各緩和機構内に独立に時間-温度換算則の成立,および(3)各緩和機構の損失弾性率関数の還元対数周波数あるいは絶対温度の逆数に対するプロットが単一の極大をもつ対称形で与えられる。
各緩和機構(第j機構)の損失弾性率の絶対温度の逆数プロットをガウス関数に仮定して,その最大値Aj,分散の鋭さC*j,積分緩和強度ΔEjと結晶および非晶鎖セグメントの配向分布の2次および4次モーメンととの相関係数を,種々の一軸および直交二軸延伸,熱処理物について求めた。
分子配向の最も高い相関がΔEjに見出され,次の3つの結論が得られた。すなわち, (i) β力学分散は非晶鎖セグメントの配向緩和のみならず結晶高次組織の配向緩和に相関をもつ, (ii) αI力学分散は結晶高次組織中の結晶粒の回転緩和に関連し,結晶(100)面が最も滑り易い面であるとすれば,結晶α-軸(ベンゼン面に垂直な結晶軸)まわりの結晶粒の回転の可能性が高い, (iii)γ(γIIおよびγIII)力学分散は非晶鎖セグメントの局所的な変形緩和に関連する。

著者関連情報
© (社)繊維学会
前の記事 次の記事
feedback
Top