抄録
羊毛と2及び3官能性アルキル及びアリールグリシジルエーテルとの不均一付加反応を,四塩化炭素やトルエンなどの溶媒中, 50~70°C, NaClなど種々の塩水溶液を含浸触媒として用い調べた。反応は塩やエポキシド,溶媒の量や性質及び反応温度に左右された。即ち反応速度は塩濃度と共に増大するがある濃度で最大値をとった。塩の効果は塩アユオンの塩基性もしくは求核性で説明された。羊毛ケラチンのリジン.ヒスチジン,アルギニン及びシスチン残基の他に,チロシンとセリン残基へのエポキシドの付加が確められた。エポキシドの付加量は更にアスパラギン酸やグルタミン酸残基への付加量で説明できるが,蛋白質の架橋反応以外の単なるエポキシドの付加も起っていると推定される。過ギ酸/アンモニア溶液やアルカリ溶液への処理羊毛の溶解試験では,前者への溶解度はいずれも大きく低下したが,後者へはレゾルシン系エポキシドを除いて溶解性は増加した。