抄録
ガラス転移温度(Tg)以下の温度域での熱処理によるポリスチレン(PS)ならびにスチレン/アクリロニトリル共重合体(SAN)の緩和挙動をDSCの吸熱ピークから得られる過剰エンタルピー量を用いて解析した。さらにこの非平衡熱処理が,エタノールによるPSとSANの膨潤挙動におよぼす効果についても検討を行った。Tg以下の温度での熱処理によるSANのエンタルピー緩和速度は, Tg-Taが同じ温度においてはPSの緩和速度と等しかった。さらに38モル%のアクリロニトリル成分による、緩和速度への影響は認められなかった。このことから, PSとSANのヱンタルピー緩和機構は同じであると予想した。エタノールによるPSとSANの未処理ならびに熱処理試料の40°Cにおける膨潤試験を行った。高分子ガラスの膨潤過程が, Tg以下の温度での熱処理によって影響を受けることが認められた。非平衡熱処理によって膨潤の開始は遅れるが,膨潤が開始した後のエタノールの高分子ガラス中への拡散速度はあまり熱処理によって影響を受けない。PSの膨潤過程の方がSANの場合よりも熱処理を受け易い。