抄録
イギリスでは、バーゼルⅢ最終化案としてバーゼル 3.1 の導入が進められている。本稿では、The Banker Database のデータを基に、イギリスの対応状況をヨーロッパ各国と比較して検証した。その結果、イギリスの銀行と EU の銀行との違いが明らかになり、コア Tier 1 比率、資本/資産比率、流動性カバレッジ比率の 3 つの指標において、イギリスの銀行が有意に高いことが示された。また、銀行の貸出先の構成比についての分析では、リテール向けの貸出割合がイギリスで有意に高い一方、法人向け貸出の割合は EUが有意に高いことが確認された。このような貸出先の構成比の違いは、アウトプットフロアの導入時の標準的手法におけるリスク計測にも影響を与える可能性がある。